ブックワームのひとりごと

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死んだ母の借金を返すため保険会社と裁判―歌川たいじ『母の形見は借金地獄 全力で戦った700日』

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母の形見は借金地獄 全力で戦った700日 母さんがどんなに僕を嫌いでも (角川書店単行本)

 

あらすじ・概要

母親から虐待を受け、また、自身もゲイであるためいじめの対象になっていた著者。そんな著者も現在は落ち着いた暮らしをしており、母とも和解を試みていた。しかし、母が急死。彼女が残したのは、多くの借金だった。著者は借金を返済するため、保険会社を相手取り、裁判で生命保険の金を入手しようとする。

 

 

窮地に追い込まれた中で見えた人の優しさ

ゴシップめいた話かと思ったら、結構ちゃんとした家族の話でした。

著者は母親から虐待を受けていたため、今でも母親に対して複雑な気持ちがあります。

しかし母親が虐待するほど追い詰められたのは、父親が身勝手な行動をして母親を顧みなかったことも一因でした。

縁を切られて当然のことをした母親を見捨てず、さらにいいところを見てあげようとする著者の態度はすごいですね。

みんなが著者のように毒親を許すべきだとは思わないのですが、場合によっては許すことで得られるものもあるんだな、と感じました。

 

「自殺には保険金が支払われない」と主張する保険会社を相手に、「母は自殺ではない」と裁判を起こした著者。その過程で、弁護士や友人など多くの人の助けを得ます。著者に起こった災難はとてもつらいものですが、その部分は救いでした。

そして優しさはたまたま母親が優しくした相手からも与えられます。こうして見ると、禍福はあざなえる縄の如し、というのは真実なのだと思えました。

 

読んでいてつらい内容も多いんですが、著者の態度に救われる作品でした。面白かった。

 

しかしせりふは横書きなのに右綴じなので、ちょっと読みづらいです。縦書きにできなかったのでしょうか。