あらすじ・概要
新しい靴を手に入れたら、わがままな魔女ベファーナと体が入れ替わってしまった主人公、仮の名はルナ。元の姿に戻るためには、ワルプルギスの夜、黒猫とダンスを踊らなくてはいけないらしい。ダンスが魔法の力を持つ世界で、ルナはベファーナの使い魔、黒猫のノーチェとともに奔走する。
少女の成長を描いたジュブナイルファンタジー
気弱で冴えない主人公が、不思議な魔法と冒険を通して、少し成長する。ジュブナイル色の強い作品でした。
踊ること、魔法を使うことがルナ自身の心理に密接につながっていて、いい意味で世界が狭いというか、どんどん内面世界を掘り下げていく面白さがあります。
踊ることによって発動される魔法のシーンがその象徴で、ダンスの描写とともにルナの心情が示されています。
踊る魔女と音楽を奏でる男たちが暮らす世界で、ルナは誰かを助け、交流をしているうちに新しい自分自身に出会います。内向的だからこそ立ち現れる心の豊かさを感じました。
ベースは少女の成長物語である一方、世界観はかなりトンチキです。機械化を拒む長老が電動車いすに乗ってエアコンを使っていたり、主人公のパートナーであり恋愛対象のノーチェがかなりのヘタレ猫だったり。フラダンス人形に恋するネズミもいます。
しかしそのトンチキっぷりがいい味を出していて楽しいんですよね。
特にノーチェの容赦のないヘタレっぷりは面白かったですね。少女向けライトノベルの男って、だいたい金持ちで強いんですが、ノーチェにはそういう背景はまったくありません。魔法で人間の姿になっただけの、正真正銘ただの猫です。猫だからお金もないし力もない。
しかしそのただの猫であるノーチェが、なぜベファーナの帰りを強く待っていたのか明かされたときには「かわいいじゃん……」となりました。
一冊で非常にきれいにまとまっており、続きが考えられないくらいの潔い終わり方です。一冊完結ラノベを探している方にはおすすめです。