あらすじ・概要
BL漫画家である著者は、ある日卵巣に腫瘍が見つかり、がんを告知される。手術によって卵巣を切除し、抗がん剤治療をスタートすることとなった。家族や友人など、身の回りの人に支えられ、また悲しい別れを経験する。がんと闘う日々を描いたコミックエッセイ。
周囲の助けや心の交流が面白い
がんになった著者の、周りの人々の描写が丁寧で面白かったです。励ましてくれる友達もいれば、病院で親切にしてくれた人もいて、人間の縁を感じます。
特に、入院中に同室だった同じがん患者の「Aさん」とのエピソードは悲しかったです。Aさんは著者にがんについて相談に乗ってくれたり、本の貸し借りをして、つらいとき心の交流に救われていました。しかし著者の治療が上手くいく一方で、Aさんの治療はままならず、ついに治療をやめて自宅で過ごす決断をします。
自分が生き残って相手が死んでしまうという苦しみ、Aさんとのささやかだけれど優しい思い出、線香を上げに行ったときのAさんの夫の優しさ。この章だけで完成されているエッセイでした。
それから著者の父親のエピソードが面白かったです。娘のために東京に来るものの東京が楽しくて居座ってしまう話に不謹慎ながら笑ってしまいました。
でもそんな父親も、娘のために国民健康保険の軽減の制度について調べ、はねられると役所に抗議に行くといういいエピソードもあります。こういう人のいいところと悪いところ両方描かれている本って好きです。
ところでこの作品のAmazonレビュー、一番上の感想がすごくためになるので、読んだ後に一読してほしいです。
専門的知識を交えつつよく読みこんでいるいいレビューでした。