あらすじ・概要
博物館にやってきた女性。職員が取り出し説明するのは、不思議なおもちゃたち。命を持つシャボン玉、未来に描く絵を出力する機械、並行世界を覗けるバッジ。それらのおもちゃを使ってみるたびに、奇妙な感覚に襲われる。表題作ほか、不安と懐かしさが混在するSF短編集。
得体の知れなさが楽しく惹かれてしまう
作者の描いたWeb漫画を読んだことがあるけれど、一冊にまとめてもらったほうが読みやすいし、記録に残した方がいい漫画だと思うので書籍化されてよかったです。
作風としてはSFと民俗学と日常が交じり合ったような雰囲気で、はっきりした構成やドラマ性がなくオチも意味深に終わってしまうものが多いです。
でもその得体の知れなさがそれぞれの短編のテーマと非常に合っていてどんどん読み進められてしまいます。
以下、面白かった話感想です。
「有害無罪玩具」
不思議なおもちゃを収蔵するミュージアムを描いた表題作。
取るに足らない、何気ない不思議なおもちゃのはずなのに、その存在は不安をかき立ててしまう。その不穏さが最高に楽しいですね。
女性と職員の会話そのものもうっすら気味悪くて好きです。
「虚数時間の遊び」
自分以外時間が止まってしまった夜の世界をさ迷い歩く女性の話。
静かな世界にしんしんと降り積もるような狂気が魅力的でした。時間が止まっているので何一つ解決しないんですが、それだけ無限の無為の時間の重みを感じます。
「金魚の人魚は人魚の金魚」
不老不死だが意思もなく思考もしない存在、「金魚の人魚」を巡る話。
こちらも何一つ解決せず、不老不死の金魚の周りで人が死んだり生きたりするだけのお話です。
意味なんてないよと積極的に肩透かしを食らわせてくるような作品なのに、面白いから不思議なんですよね。