あらすじ・概要
宿を失くしネットカフェを泊まり歩いていた遠野青児は、罪を犯した人間が妖怪の姿で見えてしまうという力があった。彼は不思議な館に迷い込む。そこにいたのは不思議な少年、西條皓(さいじょう・しろし)。彼は鬼の代わりに罪人を地獄へ送り込む仕事をしていた。青児は、住み込みで皓の元で働くことになった。
「罪には罰を」というストーリーにキャラクターで深みを与える
Kindle Unlimitedで読了。
怪奇ミステリといいつつ謎解きそのものにファンタジー要素はなく、現実に起こることだけで推理が進行します。怪奇ミステリだけれど特殊設定ミステリではありません。
謎解きより雰囲気重視という感じなんですが、この雰囲気がとてもいいんですよね。「罪人に罰を与える」という設定だと単純な勧善懲悪になりそうなところを、キャラクターの人格によって上手く人間関係に深みを与えています。
人間の描き方は露悪的で、あまり気分のいいものではないのですが、それでも過去や周囲の人間関係の描写により、弱さゆえに罪を犯してしまったことが示されます。
探偵と助手の人格自体も善人とは言えず、被害者を少なくしようという意思はあるもののしゃべっていること、考えていることはツッコミどころ満載です。でもそういう善人ではないからこそ説教くさくならずに読めるのでしょうね。
描写もコミカルなところときれいなところのバランスが良くてすらすら読めます。
あと皓と青児の飼い主とペットのような関係が面白いですね。ヤバい館だと思っているのにおいしい食事や衣食住につられて環境になじんでしまう青児と、そんな青児を面白がって傍に置こうとする皓。倫理的とは言えない関係性ですが、世界観とも相まって楽しくなってきます。
私はブロマンス属性がないのでそこまでじゃないんですけれど、ハマる人ははまりそう。