あらすじ・概要
多忙な作家の母親を持ち、いつも寂しい気持ちを抱えているユウキ。彼女は見知らぬ世界に迷い込み、その中の「物語」を修復するよう強要される。そこで出会ったのは、美しいお姫様だった。ユウキは彼女と協力し、異世界から脱出するために物語を修復しようとするのだが……。
何で「男らしく生きられてよかったね」という価値観を付け加えてしまったんだ
文章もうまいし世界観もうまいしキャラもいいし、2/3くらいまではすごく楽しんで読んでいたのですけど、オチのジェンダー観が最悪過ぎて手のひら返してしまいました。
いや「偽っていた自分から元の自分に戻る」のはいいとして、どうしてそこに「男らしく生きられてよかったね!」という価値観を付け加えてしまったんですか。2018年の作品とは思えないですよ。
そもそもクリスは別に女装を嫌がっていたわけではなかったし、女の振りをすることを抑圧として描写されていたわけでもありません。「元に戻れてよかったね」とするなら、自分を偽るしんどさもちゃんと描くべきだと思います。
一応面白かったところも述べておくと、「ばらばらになった物語を修復する」という出だしはつかみがよくて楽しかったです。文章もうまくて読みやすいし、特殊なシーンでもぱっとイメージできる描写力もあります。
作者の能力自体は高いとは思うんですけど、こんな最悪のオチ見せられたら他の著作に手を出しづらくなりますね……。