ブックワームのひとりごと

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認知症の母は過去の思い出をさまよい死んだ父と出会う―岡野雄一『ペコロスの母に会いに行く』

ペコロスの母に会いに行く

 

あらすじ・概要

父の死後、認知症になってしまった母。その母を介護し、施設に入れて面会に通った日々を、四コマ漫画で語る。認知症の症状で過去の思い出をさまよう母は、酒乱だった夫の幻を見るようになる。幻の中の夫は優しく、穏やかに、母に会いに来てくれる……。

 

老いた母の人生にもきっと意味があった

エッセイとフィクションが交じり合うような作品で、著者の介護の日々と、認知症の母の言動から呼び起こされた過去の母を、想像して描くパートが両方描かれています。

 

著者の父はアルコール依存症で、今で言うとDV夫です。でも話を読み進めているうちに、アルコール依存症でコントロールできない自分を短歌に読み苦悩する一面もあることがわかっています。

これを読んでいると、周囲の人間が勝手に他人の人生を判断し、幸せだとか不幸だとか決めつけることの愚かさを感じます。

父も母も、戦後の長崎でつらい思いをしてきました。でもその苦労が今の感覚ではありえないからといって、意味がないとは言えるでしょうか。

 

母親の人生の幕引きを目の前にして、何とか母の物語に美しいものを残したい。それは甘ちゃんな考えかもしれませんが、否定はできませんでした。

 

実際のところ介護はこんなロマンチックなものではないとは思いますが、「そう思いたい」ということ自体は悪いことではないでしょう。読み終わってから少し泣いてしまいました。