ブックワームのひとりごと

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発達障害者が読んだら身につまされたけれど肯定された気がした―heisoku『ご飯は私を裏切らない』

ご飯は私を裏切らない (角川コミックス・エース)

 

あらすじ・概要

中卒、29歳。派遣のアルバイトを転々とし、何とか食いつないでいる主人公。そんな主人公の楽しみは、食べること。いくらをトーストに乗せたり、パウチのおかゆを袋のまま食べたり。料理をし、食べながらぐるぐると思考は回る。食事を通して底辺貧困女性の生活を描く。

 

救いはないがだめな人間でも生きていてもいい、という肯定がある

作者が意図して書いたかはわからないんですが、発達障害者としては身につまされる話でした。

主人公は中卒の派遣アルバイターで、様々な職を転々としています。頑張って働こうとしても、ミスを繰り返し、いつもうまくいきません。派遣という職を選んでいるのも、「短期の仕事の方が自分のぼろが出ないから」という理由です。

私は頼れる家族がいるからこういう風にはならなかったんですが、発達障害者の中には主人公のような生活をしている人がいます。何とか派遣で食いつないでいる人に出会ったことがあります。

というかうっかりすると彼女のような人生を送っていたのは私かもしれません。

 

主人公は食事をしながらネガティブなモノローグを垂れ流し、何らかの結論をつかんだように見えるも、またいつもの生活に戻っていきます。

誰かから救いの手が差し伸べられたり、主人公が成長していったりはしません。

 

とはいえ、この作品が描くのは、悲しみだけではありません。

人が当たり前にできることが、自分にはできない。その絶望を描きながらも、そこで終わらず、「まあそういうだめな人間だってなんとか生きていってご飯食べていいよね」という肯定があります。

そのために「食」を主題にするのは大正解でしょう。食べることは生きることの根幹ですし、自分は生きていてもいい、と思えないと前に進めませんからね。

 

打ち切り漫画なのか、最後も特に何も起こらずさらっと終わります。だけど作品のテーマを考えるとこの終わり方でもよかったと思います。

明確な救いはない作品ですが、それも含めて「だめな自分」を否定しないでいてくれる作品でした。面白かった。