あらすじ・概要
ポーランド国王の甥、ユーゼフは母親に愛されず、鬱屈した日々を送っていた。折しもポーランドは政情が不安定な中、領土拡大を狙う周囲の国々の圧力や干渉に悩まされていた。ユーゼフは国の将来を憂い、ポーランドを自立した国にしたいと思う軍人の青年に育っていく。
勝った国の視点で語られがちな歴史
結構創作が含まれているようで、すべてを真に受けるわけにはいきませんが、ついつい大国基準で語られがちなヨーロッパ史について考え直すきっかけになりました。
国家として自立し、独自の憲法を持ちたいと熱望するポーランドの人々を、プロイセン・オーストリア・ロシアの大国が阻みます。国王の権力が強くなく、貴族たちは個人の損得勘定ばかり気にするために、他国の干渉を受けやすく、ポーランドは何度も翻弄されます。
考えてしまったのがポーランドに干渉し支配しようとする他国の君主がロシアの女帝エカチェリーナ、プロイセンのフリードリヒⅡ世、オーストリアのマリア・テレジア(帝位は彼女の息子が持っていましたが)と、その国では賢君と呼ばれる人々だったことです。外国人の権利なんて気にしない時代だったのもあるにしろ、ポーランドの人々はこれらの君主が賢君とされるのって嫌な気分だっただろうなあ、と思ってしまいました。
わかりやすいのでつい戦争に勝った国の視点で考えがちですが、負けた方の国としてはたまったものではなかったでしょうね。
昔の作品というのを差し置いてもジェンダー観が古く、キャラクターはほいほい浮気をするし、しょうもない恋愛で話が展開するのですが、ポーランド分割の歴史を知るきっかけとしては面白かったです。
あと画力がしっかりしていて、豪華絢爛な衣服がバンバン出てくるのも楽しかったです。この時期のファッションが好きな人には楽しいと思います。
古いのでツッコミどころがないわけではないんですが、ポーランド分割というテーマは唯一無二だし、画力もコマ割りもしっかりしているので楽しんで読めました。