あらすじ・概要
昨今話題になっている人より敏感な体質「HSP」。しかし科学的な知見や研究を置き去りに、都合よく使われている言葉でもある。HSPについて研究している著者が一般的に流布しているデマを訂正し、科学的にHSPを知る方法は何か、今自分の敏感さに何ができるか考える本。
こういう本がもっと増えてほしい
私は自他ともに認める敏感な人間であり、何かの参考にならないかとHSP関連の書籍を読んでいたのですが、「作者はいい加減なことを言っているな」と思う本がかなりありました。この書籍はそういう「HSPについていい加減な知識でものを言う本」を断罪し、現時点の科学でHSPについてわかっていることを説明しようという本です。
まず著者が主張することは、「HSPというのはいいものでも悪いものでもなく、ニュートラルな属性である」ということです。HSPであることを過度に賛美せず、また卑屈にもならない語り口で、HSPについての研究を語っていきます。
HSPについて今わかっていること、わからないこと、これからわかるかもしれないことがまとまっていてすっきりしました。
難しい内容も多いですが、各章にまとめがついているのでよくわからなければそれだけ頭に入れても大丈夫です。
また、HSPという言葉を使って安易に人を語ることに、著者は警鐘を鳴らします。「敏感な体質」は存在しますが、その体質だけでその人がすべて語れるわけではありません。血液型占いのように、根拠のない属性分けが増え続けることに著者は危機感を覚えています。
もちろんこの本一冊でHSPのことがわかるわけではないですし、もっと研究を深めていく必要がありますが、「現段階ではわからないことはわからない」とはっきり言ってくれるところに研究者としての誠実さを感じます。
このような本がもっと増えた上で、HSPに関する議論が進んでほしいと思います。
2000円越えの割にはボリュームは少ないけど買う価値のある本でした。