ブックワームのひとりごと

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女性を守るための仕事で行われる女性搾取―竹信三恵子・戒能民江・瀬山紀子編『官製ワーキングプアの女性たち あなたを支える人のリアル』

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官製ワーキングプアの女性たち――あなたを支える人たちのリアル (岩波ブックレット)

 

あらすじ・概要

フルタイムで働いても貧しいままの人「ワーキングプア」。人々を支えるはずの行政の現場でも、ワーキングプアを産んでしまう構造があった。その被害者は主に女性である。編者自身の意見や、実際に公務員で働く女性たちの声を取り上げ、官製ワーキングプアについて考える本。

 

女性の選択肢を増やすための仕事に、正当な報酬が払われない

女性のための活動や、公務員の研究をしている編者たちが官製ワーキングプアの今を語るとともに、実際の公務員たちの声も取り上げます。

何度も繰り返されるのは、女性のための相談活動や、保育士など、女性の選択肢を増やし守るはずの仕事において「女性の搾取」が行われていることです。大きな責任が伴い、経験が必要なはずの仕事に、十分な賃金が得られていません。これは男女平等を推し進める上での大きな矛盾でしょう。

 

また、行政の人件費削減において、大きな役割を果たしていたのが女性パートの存在だということがわかります。正規職員を減らし、非正規職員を増やした結果、低賃金で働く女性パートが激増したのです。彼女らは最低賃金で働き、不要になったら夫や家庭に返せばいい……そういう思想が見え隠れします。

 

編者たちの意見も、当事者である公務員女性の声も、現場をよく知っているからこそ書けるものでした。強い現実味と、悲しさを覚えます。

 

公務員ではないけれど、私も非正規雇用で、正社員の仕事を肩代わりすることに、正直違和感を覚えています。きちんとお金をもらって、働かせてもらえるならそれだけでいいんだけど。