あらすじ・概要
高校生の咲馬は、ある日男の幼馴染の汐(うしお)がセーラー服を着ているのを目撃する。汐はしばらく学校を休んだ後、女子生徒の制服を着て投稿してきた。「これから女の子として生きる」と宣言した汐に、クラスメイトたちは困惑し、心ない言葉をかけるものも現れた。
性別が変わった人を周囲がどう受容していくか
女の子になりたい男の子、いわゆるトランスジェンダーの話です。しかしながら、当事者の話ではなく、マジョリティである周囲がどう受け入れていくかという問題が、話の要になっています。
主人公咲馬は幼馴染である汐が女の子になってしまったことから、今までの距離感を保てなくなってしまいます。また、誹謗中傷にさらされる汐に心を痛めながらも、どう庇えばいいのか悩みます。
さらに汐は元々美少年であり、片思いをしている女子たちも多かったのです。そんな女性陣も、「好きな男の子が女の子になった」という形で失恋をしてしまいます。あまりに特殊すぎる恋の終わりに、戸惑うのは仕方のないことでしょう。
結局どれだけメディアで性的マイノリティのことをやろうと、価値観はスイッチを切り替えるように変わりません。実際に目の前に、マイノリティの人が現れないとわからないことはたくさんあります。
マイノリティ側が「価値観を変えるときの葛藤」の責任を取る必要はまったくないのですが、自分自身としてはその葛藤をどこかに持っていかなければならない。どうすればいい? ということを考えさせられました。
葛藤やいらだちを描きながら、ストーリーの中でコミュニケーションを大切にしているのが感じられて、それぞれのキャラクターに共感しながら読めました。
終盤に大きなクリフハンガーがあり、1巻としてはすっきり終わらなかったことだけは少し残念ですが、時間があれば続きも読みたいです。