ブックワームのひとりごと

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『やわいボンド』菊池真理子 A.L.C.DX 感想

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やわいボンド (A.L.C. DX)

 

あらすじ・概要

最近犬を飼い始めた鈴音は、同じく犬を飼っている近所の人と仲良くなる。同時に、鈴音は友人の冴との関係に悩んでいた。意地悪で辛辣なことを言うようになった冴、さらに冴は、少年院を出所した殺人犯と交流を持っているらしく……。鈴音は友情と不信の間で揺れ動く。

 

ゆるやかなつながりが子どもたちを救ってほしい

宗教二世や毒親のインタビュー漫画で有名な著者。フィクションのほうはどうかなあと思っていましたが、面白かったです。

主人公、鈴音は最近友人の冴が変わってしまったことが気になっています。辛辣な物言いを繰り返し、前科持ちらしき人と交流を持とうとします。

鈴音はそんな冴に不快感や不信を覚えながらも、子どもゆえに「もしかしたら冴のほうが正しいのではないか?」と考えます。

少し考えたら、冴の方が様子がおかしいのですが、人生経験の少ない子どもにはそれがわかりません。そこが現実味がありました。

 

話が進むごとに、冴は、複雑な家庭事情で悩んでいることがわかります。

兄を溺愛する一方で、妹の冴につらく当たる母親。そんな母親に反発しつつも、どこか母親に愛されたいという気持ちを捨てられない冴が哀れでした。

家庭環境のいい鈴音と自分を比べてしまう冴に、心が痛みました。

 

タイトルの「やわいボンド」は犬の名前であると同時に、人と人のゆるやかなつながりを示します。

子ども時代に親切な、それでいて多様な価値観を持つ大人に出会うことは大事なのだと思います。

搾取する大人もいるので怖いけれど、それでも日常を生きる子どもたちにゆるやかなつながりを持ってほしいと思いました。

 

 

 

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