だっしゅ
あらすじ・概要
アルコール依存症の父を持ち、苦労してきた著者。彼女はアルコール依存症や薬物依存症について調べることとなる。依存から脱却して酒を飲まない生活を続けているミュージシャンや、依存症の支援施設を取材するうちに、著者は改めて自分の過去と向き合わざるを得なくなる。
ひどい目に遭ってもアルコール依存症について知りたいと思える著者はすごい
同著者の『酔うと化物になる父がつらい』を読んだ後だと、依存症の人たちと話し合い共感を示す著者に驚きます。依存症の父親にさんざんな目に遭わされていましたから。
「お酒は悪いものだ。アルコール依存症の人はクズだ」という結論にはならず、なるべく多面的に人をとらえようとする著者の作風はとても好きです。
ある意味メッセージ性、政治性が強い作風だと思います。しかし著者個人の価値観から始まり、どう世の中を変えていくかという話の流れが自然で、押し付けがましくなくていいですね。
内容としては、アルコール依存症であることを告白しているミュージシャン森重樹一氏への取材の回が面白かったです。
値は繊細で生真面目な森重氏は、ロックミュージシャンになったものの、その荒々しく大仰な文化についていくために飲酒を始めてしまいます。
飲むことで仕事できていましたが、体を壊しうつ状態になり、半ば廃人状態になってしまいます。
現在は断酒を続けていますが、年に200日は自助会に行くという徹底ぶり。今は普通でも、飲酒の恐ろしさを覚えているのだなあと悲しいような喜ばしいような気持ちになりました。
著者のように虐げてきた父親について考える義務はないと思いますが、それでも考えた結果を共有してくれるのはありがたいです。