ブックワームのひとりごと

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青年が日本列島を覆う横浜駅の中で大冒険 柞刈湯葉『横浜駅SF』感想

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横浜駅SF (カドカワBOOKS)

カクヨムで連載されていたweb小説の書籍化です。

kakuyomu.jp

 

あらすじ

横浜駅が増殖し、日本を覆いつくした未来。横浜駅の外で育った三島ヒロトは、5日間だけ駅の内部(エキナカ)で過ごせる「18きっぷ」を手に入れ、42番出口を目指して旅立つ。ヒロトエキナカで見た横浜駅の真実とは……。

 

横浜駅が日本を覆いつくす」という発想のすごさ

あとがきによると、現実の横浜駅が延々と工事を繰り返していることにヒントを得てこの小説を書いたそうです。

あらすじだけなら出オチ小説なのですが、ただの出オチにとどまりません。「横浜駅が日本を覆った未来」に対して、社会の仕組みやそこで生きる人たちの行動、一面のエスカレーターや黒い富士山などのビジュアル的面白さがきっちり描かれているのがすごいです。

横浜駅が増殖するという「ありえない」設定を、世界観をじっくり描き出すことで「あるかもしれない」と思わせる手腕には脱帽しました。

個人的お気に入りシーンは、ヒロトが延々と続くエスカレーターを上る部分です。あのシーンを映像で見てみたいです。

 

滅びをもたらすよそ者

その上『横浜駅SF』が好きなところは基本的に「よそ者」の物語なところですね。主人公のヒロトもそうですし、途中で登場する工作員ネップシャマイ、九州から旅に出たトシルなど、旅人たちが横浜駅に関わっていきます。

異邦人が冒険をしてその世界なり国家なりの真実に近づく、という話が好きなのですごく楽しかったです。

Amazonレビューでは「オチが弱い」という意見も見かけたけれど、主人公が淡々としたキャラなので、ああいう地味なエンディングの方が似合うような気がします。

きちんと終わってはいるんですが、続編を意識した結末であることは否めないので、一冊の本としての完成度は下がってしまった気がします。もちろん面白いんですけれどね。

 

まとめ

ネタ小説でありながら本気のSFでもあり、そのギャップが面白かったです。

続編も買いたいけれど、ちょっと今財布が厳しいのでしばらく買えないかもしれない……。

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

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横浜駅SF (1) (角川コミックス・エース)

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