今日の更新は、映画『ポプラの秋』です。
原作が好きだったので見てみました。
あらすじ
父が死に、あてもなく出かけたときに見つけたポプラの木。そのふもとのアパートに住むことになった千秋と母は、少し変わった大家のおばあさんと交流するようになる。彼女は、「死者への手紙を届けることができる」と話した。千秋は彼女に手紙を預けるようになる。
生きるための死後の物語
小説でも泣いたんだけど、映画でも泣いてしまいました。めったにフィクションで泣かない人間なのでこれは稀有です。
おばあさんの「死後、手紙を死者に届ける」というのは、単なるなぐさめであってスピリチュアルなことではないと思うんですけれど、そういう「物語」が必要な時ってあるんですよね。
死はいつだって理不尽で、理屈では納得いかない。そういうとき、「死後の物語」が救いになってくれる。そういうシチュエーションに泣けてきます。
そして、死者宛の手紙を集め続けることが、おばあさんにとっても生きる意味だったんだろうなあ、と思うと苦しいです。
最後まで見ると、「いつ死んでもいい」というおばあさんのせりふが重く感じました。
そして、ラストの手紙のシーンは何度見てもしんどいです。うまく生きられなかった人と、彼に取り残された人。誰が悪いわけではないけれど、それでも苦しまずにはいられない状況。感動するというよりつらいです。
でも、手紙を渡したということは、少しずつ前に進めているんでしょうね。
映画特有のことを話すと、主人公の千秋の母の、危うい演技が怖かったです。あっこの人、ぎりぎりのところで綱渡りをしているんだな、と思いました。
直接的な描写はほとんどないんですが、死をほのめかす演技と演出にぞっとしました。線路のシーンは本当に怖かったです。
そしてそれに反応して、不安定になっていく千秋の演技もよかったです。これは、映画でしか表現できなかった気がします。
原作ではもっといろんなエピソードがあったけれど、コンパクトにまとめるためにカットしたのでしょうか。これはこれでありかなあ。
まとめ
久しぶりにストーリーを思い出す意味でも面白かったです。そしてもう一回泣いてしまいました。
「生きるための優しい嘘」というものに魅力を感じる人にはおすすめです。