ブックワームのひとりごと

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「恋愛小説」を丁寧にまとめ上げる筆力―崎谷はるひ『トオチカ』感想

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トオチカ (角川文庫)

今日の更新は崎谷はるひ『トオチカ』です。

おすすめ記事から見つけたもの。

yocchi.hatenablog.com

 

あらすじ

過去の恋のトラウマにより、男性が苦手な里葎子。逃げるように叔母の住む鎌倉に行き、友人と共にアクセサリーショップを開いた。そんな里葎子を何かと構いたがる男、千正がいる。里葎子は彼の行動を測りかねていたが……。

 

結構濡れ場があってびっくり

まず、結構濡れ場があってびっくりしましたよ。それがメインというわけでもないのですが。

なんとなく、こういう表紙の作品は濡れ場がないものという先入観がありました。

日常シーンとそういう濡れ場シーンがすごくかみ合っていて、違和感がなかったです。「このキャラクターならそうするだろうな」という説得力があります。

筆力のある人なのだな、としみじみ思いました。

 

恋愛の展開そのものは、結構もだもだしていて、お互いすぐ素直になれず、遠回りをしてしまっています。

でも、過去のトラウマや、不器用さで遠回りをしてしまう、優しくしたいのにその手を振りほどかれてしまう、という過程が面白かったです。読者としてじらされまくったけれど、そこも含めてときめきました。

大人だからこそ、素直になれないラブストーリーでした。

あらすじだけをまとめてしまえば「トラウマもちの女性がイケメンに癒される」というテンプレの話なんですが、テンプレであることを忘れさせてくれるくらいの描写力があってすごかったです。

 

普段あまりラブストーリーは読まないのですが、こういう作風ならまた読みたいですね。

湿っているけどそれが心地いい、お風呂の中のような小説でした。

 

まとめ

 完全にノーマークなジャンルだったんですけれど、面白かったです。

狙ったわけではないんですが、この方もBL小説出身の作家さんなんですね。気になるものがあったらそっちも読んでみたいです。

トオチカ (角川文庫)

トオチカ (角川文庫)