今日の更新は、瀧波ユカリ『ありがとうって言えたなら』です。
あらすじ・書籍概要
漫画家である著者の母親が、すい臓がんだと告知される。余命は長くて1年。姉のいる大阪に母は移り、著者はそこへ何度も通う。世話をする姉につらく当たったり、いらいらしたり、死に追い詰められた母は変わっていく。
親を看取るということ
何気なく読んだ漫画だったんですが、最後に泣いてしまいました。
変人だったけれど強くて美しかった母親が、死が少しずつ近づいてくるにつれて理性を失い、見た目も痩せていって、変わっていく姿が読者の視点からもつらかったです。
そして死への不安から、いらいらしたり、周囲に当たったり、最後にはせん妄状態になったり、その精神状態は感動的とは程遠いです。著者と姉は振り回され、苦しみながら母親を看取ることになります。
そのリアリティが苦しくて、また泣けてきます。自分を守ってくれた親が、親らしくなくなっていくその時間、想像するだけで苦しいです。
帯にある通り、著者は母親と仲のいい子どもではありませんでした。我が強い母親についていけず、疲弊してしまったことも多いようです。しかし不治の病になった母親に直面して、否応なく母親との記憶に向き合うことになります。
ストレスの中受けたセラピーで「お母さんをこれ以上嫌いになりたくない」と吐露する著者の姿は、将来の私なんだろうな、と思ってしまいました。うちの親はまだまだ元気だし、大きな病気もしたことがないけれど。いつかこの作品と同じように苦しむのでしょう。
きれいごとではない肉親との別れを描いているからこそ、この作品は優しいですね。ある意味全ての人に関係のあるコミックエッセイでした。
読むのはつらいですが、ところどころユーモアも交えているので読みやすいです。もっといろいろな人たちに読んでほしいです。
まとめ
読むのはつらかったけれど読んでよかった本でした。アラサー以上の人々にたくさん読まれてほしいです。
おそらく親が病気をしたときにこの本を思い出すのでしょう。