あらすじ・概要
ユニクロのブラック企業っぷりを批判してきた著者。ユニクロの社長柳井社長の「どういう企業かをぜひ体験してもらいたい」という言葉をきっかけに、潜入調査を決意する。アルバイトとして面接に通った著者は、ユニクロで働き始めるが……。
ヒエラルキーの下の人間の悲哀
潜入ルポは本全体からすると半分くらいなので、ユニクロで働く著者が見たかった人は肩透かしを食らうかもしれません。
この本のテーマはいかにユニクロがアルバイトや海外の工場労働者など、社内ヒエラルキーの下の人間を搾取しているかということです。
著者はユニクロで働くうちに、低賃金による慢性的な人不足や、柳井社長の気まぐれで発される命令、店の都合しか考慮されないシフト制作を体験します。
たとえばシフトは「人件費を節約したいから」とほとんど入れてもらえない店もあれば、忙しい時期だと無理やり連続で入れられてしまう店もあります。アルバイトが自分で自分の労働時間をコントロールできないのです。
効率化を進めているつもりが、アルバイトの搾取によって人が集まらず、結局効率化ができていない。下の人間ばかりが疲弊して、ユニクロを去っていきます。
潜入ものとしては、ユニクロを批判する目的であっても著者が真面目に働いているのが面白いです。
売れ筋の商品を目立つところへ置きなおし、ほとんどなくなっていることに気付いた著者は商売の面白さを感じます。
夕方になって、ダークグレーとグレーの商品がほとんどなくなっているのを見つけたとき、自分の作業に意味があったことへの充足感を覚える。ユニクロの売上げを伸ばすことが潜入取材の主な目的ではないのだが、なるほど商売とはこのように考えるのか、というおもしろみの一端を味わった。
(P136)
こういうちょっとした喜びが、リアリティがあってよかったです。
著者はユニクロをつぶしたいのではなく、経営の支配層と下の労働者の断絶を埋めたいのだと思います。
私もユニクロ大好きなので、何か申し訳ないな……と思いつつ、もしユニクロの労働者がユニクロと対決することがあったら応援したいと思います。
『〇〇』まとめ
ユニクロという巨大企業で働くということがよくわかった本でした。今はどうなのか知らないけれど、これを読むと絶対にユニクロで働きたくない気分にさせられますね。
早く労働者も経営者も共存共栄できるシステムにしてほしいです。