あらすじ・概要
著者は、大阪のとある劇場で大衆演劇の裏方をしている。たまたま見た大衆演劇にほれ込んだ著者は、大衆演劇に関わる仕事へ進んだのだ。大衆演劇ならではの文化、ひとりで裏方をすることの苦労、俳優の人々との付き合いなど、舞台に関わる日常を描いたコミックエッセイ。
あなたの知らない大衆演劇の世界
大衆演劇という文化の存在は知っていましたが、どういうものなのかはっきりイメージはできていませんでした。この漫画を読んで、具体的に知ることができてよかったです。
まず面白いのは、大衆演劇というものは一般的な演劇とはかなり文化が違うことです。
台本はなく、座長の頭の中に入っているストーリーを俳優たちと打ち合わせて稽古をします。そのようにはっきり決まっていない脚本なのでアドリブも多く、かっこいいせりふもその場の勢いで言っている場合があります。それでいて、観客が楽しめるものに仕上げていくのはプロですね。
また、演劇と一緒に行う舞踊ショーでは「花をつける」と呼ばれるおひねりの文化があり、俳優の着物にお札をクリップで留めます。これを上手につけられるコツも紹介されていました。
いつも同じクオリティの作品を上演するようなコンテンツではありません。しかしいい意味での俗っぽさ、観客との距離の近さが魅力なのでしょう。「何だか怪しい世界だな」と思っていたけれど、その怪しさにも作り手なりの理由があるんですね。
裏方をひとりでこなす著者もすごかったです。「明日〇〇用意して」と言われれば、刀掛けでもおにぎりでも作って用意をし、幕を閉める微妙なタイミングを調節し、自分の体より大きな大道具を片付けます。作中では淡々とこなしていますが、労働者としては本当に仕事が多いです。尊敬するわ。
エンターテインメントに関わる面白さと大変さ、そして大衆演劇という文化についてよく伝わってくる作品でした。