ブックワームのひとりごと

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同性愛者の少年、腐女子に告白されて付き合う―浅原ナオト『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』

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彼女が好きなものはホモであって僕ではない (角川文庫)

 

あらすじ・概要

同性愛者である高校生、安藤純はある日クラスメイトの女子、三浦がBL本を買っているところを目撃する。三浦はそれ以来積極的に純に関わるようになり、ついには告白してきた。「将来子どもがほしい」「普通になりたい」「恋愛感情ではないが三浦が好きだ」という気持ちが交錯した結果、純はその告白を受け入れてしまった。

 

もしも、「こうあるべき」という価値観に従えなかったら

主人公はゲイですが、ストーリーとしては男と女の感情の話です。三浦に惹かれ、好ましいと思いつつ、「性器が勃起しない」という点でどうしても「普通の彼氏」にはなりえない純は悩みます。

実は純はずっと年上の既婚の男マコトと不倫関係にあります。マコトが表面的には「普通の父親」を演じていることから、自分もそういう人生を送ることが可能なのではないかと思ってしまいます。しかしそれは、同性愛者にも異性愛者にも不実な、「こうもり」の道でした。

 

未成年淫行も含めて、きわどい表現や倫理的に危ない表現が多く、諸手を挙げておすすめすることはできません。しかしこの作品の登場人物が不完全で、差別心を持ち、正しくないからこそ、面白いのです。

生まれたときから社会の「こうあるべき」という価値観に従えない存在だったら、どうすればいいのか。狂うことなく、他人を傷つけず、生き延びるにはどうしたらいいのか? 作中に登場するゲイたちは、常に自問自答を続けます。その結果、悲劇的な結末を迎えてしまうことも……。

デリケートな問題を扱うゆえに、白黒はっきり分かれるような、わかりやすい物語にしてはいけなかったのだと思います。

結末も「登場キャラクターたちはこうした」という感じで、読者に「こうするべき」という価値観を押し付けませんでした。描写としてはあっさりしていますが、そこがこの作品の魅力です。

 

「ショタコンは死ぬべき」だと思っている人にはおすすめしませんが、私はこの尖った内容を買いたいです。Web小説発でこういう作品が出てくることはとてもいいことだと思います。

御徒町カグヤナイツ

御徒町カグヤナイツ