あらすじ・概要
ドラッグ・クイーンのルディは、口パクでショーに出演しながらも自分の声で歌うことを夢見ていた。そんな中、同じマンションに住む女性が薬物使用で逮捕される。彼女が残していったダウン症の息子を、ゲイの弁護士、ポールとともに引き取って育てることにした。三人はしばらく、幸せな家庭を築いていたが……。
世の中の理不尽に耐えている世代に染みる話
同性愛要素ももちろんあるのですが、「大人が共闘して世の中の理不尽から子どもを守る」という話でした。
歌いたいという欲を押さえて口パクで踊るルディも、ゲイであることを隠して働くポールも、長いものに巻かれて傷つきながら生きていることに変わりはありません。そんな彼らが、ダウン症の少年マルコと出会って、「守らなければ」という義務感とともに法廷に立ちます。
そこそこ年を取って、世の中の理不尽を苦笑いして耐えているような世代にこそ、この作品は響くのではないでしょうか。
それから映像作品としてとても見やすかったですね。せりふで語ることと映像で語ることのバランスがよかったです。ここが変だなと思う部分がほとんどなく、さらさらと見られました。
要所要所でルディが歌うシーンが挿入されていて、それがルディの心情や、作品のテーマを示しています。その音楽の使い方も素晴らしかったです。
ただ、話を分かりやすくするために、がっつり削られている描写もありました。知識のない人がいきなり障害のある子を引き取ってうまくいくとは思えないし、ルディに息子を預けることを同意した実の母親も真意がわからないまま終わります。
現実はフィクションのように美しい悲劇にはならないことを、頭の隅に置いておきたい作品でもあります。
余談だけれど原題は「Any Day Now」らしいです。「チョコレートドーナツ」は偏食なマルコが食べられるお菓子。個人的には好きな邦題ですね。