ブックワームのひとりごと

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「普通」が幻想だと知ると自虐が楽しめなくなる―カレー沢薫『負ける技術』

負ける技術 (講談社文庫)

 

あらすじ・概要

文章も書く漫画家カレー沢薫。彼女が書いたコラムを書籍化。そこにあるのは、コミュ力のない根暗なオタクの暗い過去だった。毎日の虚無をおもしろおかしく描きながら、冴えない人間が毎日を生き抜く姿を伝える。

 

逆に「普通に囚われている姿」が強調されてつらい

何だか年を食うほどにこういう「コミュ障・ブス・仕事ができない」的な自虐があまり面白く思えなくなってきましたね。

コミュ障の自虐って、「やっぱり友達がたくさんいて異性にモテて仕事も充実している人生がいいよね」っていう「ふつう」の幻想の元にあるんですよね。そんなものは幻想だな、と自覚をしてしまった後はあまり楽しめなくなってしまいました。

著者はメンタルの不調で会社を辞めたこととか、仕事を転々としていることとか、青春の思い出がないことをたびたびネタにするんですけれど、いや、そんなんよくあることじゃん!? これで自虐してたら私(数年の引きこもり歴があり大学も中退している)って何なの? ってなりますよ。いや、もちろん作者本人の主観ではつらい思い出なんでしょうが。読者としては逆に「普通に囚われている姿」が強調されてつらいですよ

とはいえ固定観念を捨てきられないうちは自傷めいた言説で心を守ってしまう面もあるわけで、この『負ける技術』はそのような生きるのがしんどい人向けのエッセイなのでしょう。

 

自虐関係のない回は面白いです。道端で会ったわけのわからない人間、乙女ゲームやBLの面白ネタ、コンビニの菓子パンにかける熱い情熱などは素晴らしかったです。

特にコンビニの菓子パン回はめちゃくちゃ笑ってしまいました。確かにコンビニの菓子パンってスーパーのものよりおいしいですよね。好きなものに対するストイックな姿勢、見習いたい。

負ける技術 (講談社文庫)

負ける技術 (講談社文庫)