ブックワームのひとりごと

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いろんな意味で現代では描けない作品―ジョージ秋山『銭ゲバ』

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銭ゲバ 大合本 全4巻収録

 

あらすじ・概要

貧しさゆえに病気になった母親を失った蒲郡風太郎は、「金さえあれば何でもできる」と金に強い執着を持つようになる。お金ほしさに殺人などの犯罪行為も厭わず、ついに大企業の社長になる。しかし風太郎の周りに不審な死が多いことに気付く者が現れ始めて……。

 

昭和の時代を感じる漫画

合本版がKindle Unlimitedに出ていたので読んでみました。

面白い面白くないで言うとあまり面白くなかったです。作品のリズムが私には合いませんでした。がっつり大ゴマを使って心理描写をするところがどうにも馴染めません。

ストーリー自体も、風太郎がピンチに陥ったら「お金で何とかするんだろうな」と思ってしまうのであまりはらはらしませんでした。

 

しかしすごく「時代の文化」というものを感じる作品で、興味深い漫画です。

この漫画ではどんどん発展していく日本が描かれ、風太郎が成り上がれたのも社会全体の豊かさが増していく状況に上手く乗れたからでしょう。

その一方で、この作品で扱われている公害問題だとか、学生運動だとか、発展に取り残された、あるいは犠牲となったと感じている人々も多くいたのだと思います。

現在ではあのころの豊かさばかり強調されますが、豊かさの中で悩んでいた人も多かったのかもしれないなと感じました。

 

また、女性への暴力だとか、現代の感覚ではなかなか許されることのない表現も多いです。風太郎がそもそも悪党なので、肯定しているわけではないのですが。性暴力にトラウマがある女性にはおすすめできない漫画です。

 

いろいろな意味で現代では描けない作品で、そういう意味ではすごく勉強になりました。

昭和のことに興味がある人はおすすめです。