あらすじ・概要
30代前半に結婚した著者夫婦は、妻がチョコレート嚢胞を患ったことをきっかけに不妊治療を始める。しかしタイミング法ではなかなかできず、人工授精や顕微授精のステップに突入することに。質のいい卵子が採取できないことへの葛藤、男女の意識差に悩みつつ、五年間で下した決断とは……。
夫との関係が興味深い
1ページに四コマ二本、さらに五年間の記録ということでなかなかボリュームがあって嬉しかったです。
興味深かったのは夫との関係。産む性とそうでない性のギャップに悩んだり、けんかをしたりする一方で、優しい言葉をかけられて救われることもあります。一方的に夫を悪者に描くのではなく、また成人君主に描くのでもない。いいところも悪いところもある存在として語っているのが何だか安心しました。
不妊治療を扱う病院ごとの価値観の違いや治療方針の違いも描かれていて面白かったです。
人工授精をしようにも卵子がしっかり育たない、採取できる数が少ないということに悩む作者が悲しかったです。まずスタートラインに立てない苦しさよ……。
子どもを授かるということは運要素が大きく、不妊治療をしたところで確実に達成できるかはわかりません。頑張っても報われないという悲しみが著者をさいなみます。
タイトル通り作品は不妊治療を諦めたところで終了します。運要素がある以上こういう選択をする人も、世の中にたくさんいるのでしょう。
「子どもがいる家庭」から「夫婦だけの家庭」に人生計画を修正するのは一朝一夕にはできず、わだかまりや後悔を抱えたままの結末でした。
でもそこが逆に美談にも悲劇にもならなくてよかったです。人生の営みという感じで。