あらすじ・概要
両親が実家を引き払い引っ越すことになり、突然ひとり暮らしをしなければならなくなった著者。今のアルバイトでは暮らしていけない。生活費を稼ぐため、たどり着いたのはメンズエステの世界だった。露出度の高い服装で男性にマッサージを施すメンズエステは、風俗と普通の仕事のグレーゾーンにあたる仕事だった。
普通になれない女性たちの悲哀
セクハラ・パワハラてんこ盛り。人は立場の弱い人間に対してこんなに意地悪になれるんですね。メンズエステの仕事をしていると不信感でいっぱいになりそうです。
そして何より印象的だったのが、メンズエステで働いている女性たちが自分に自信がなく、「ふつう」になれずに苦しんでいるという事実です。
人が当たり前にできることが自分にはできない。劣等感にさいなまれ、ぼろぼろになりながらも、それでも過酷で残酷なこの仕事しかできることがない。登場する女性たちはみんなどこか欠けています。
私はこういう仕事はやったことはないけれど、「ふつう」になれずに苦しんだ記憶はあるので、読むたびに苦しい気持ちを思い出してしまいました。
私はたまたまかじれるすねがあったからいいものの、そうでなければもっと地獄を見ていた可能性はあるでしょうね……。
著者が昔の友人から、いじめを見て見ぬふりをしていたことを謝罪した手紙をもらい、それにぶち切れるシーンもつらかったです。どちらの気持ちもわかってしまうので……。罪悪感から謝りたい人間の気持ちも、今さら何だという気持ちも、両方わかります。
でもその手紙をもらったことから、著者は自分のメンズエステの仕事を見つめ直します。
著者含めて、メンズエステで働く女性たちを「自己責任」とか「そんな仕事を選ぶ人間が悪い」と言うことは簡単です。
しかしながら、そういう仕事しか選ぶことができなかった人間がいる時点で社会の責任なんですよね。なかなか重い作品ですが、読んだ価値はありました。