あらすじ・概要
妻と浮気相手を殺した罪で服役していた篠原は、住んでいた町に帰ってきた。彼は、松尾という刑事に促され、妻を殺した真犯人に財前に復讐することとなる。情報屋の男も巻き込み、事件を探っていく篠原だったが、篠原がある女性を助けたことから事態は急展開を見せる。
はすに構えた、でも大人っぽい雰囲気が魅力
すごいどんでん返しがあるわけでもなければ個性的なキャラクターがいるわけでもない、キャッチ―な要素があるわけでもない話なんですが、個人的にはぐっと来ました。それは、作品の雰囲気が私の肌に合っていたからでしょう。
『キュプロクス』はどこかはすに構えたような作品です。復讐譚なのにひどく淡々としていて冷たい質感なのもそうだし、終盤の人を食ったような展開もそう。しかしひねくれていながらも、子どもっぽくはありません。
登場人物はほぼみんなろくでなしで、正義などなくて、予定調和を拒否して終わる。それなのに中二病っぽい痛々しさはなく、ひどくあっさりとしています。
ラストシーンの、何ひとつ解決していないのにひどくさわやかな終わり方も印象的でした。下手な映画だとドラマチックにしちゃいそうな場面なんですが、さくっとまとめて、エンドロールもとっとと終わってしまうところがおかしみがありました。エンドロールは本当に短いです。
タイトルのキュクロプスはギリシャ神話の単眼の巨人のこと。人は両目で物を見て初めて相手との距離感をつかみます。これは距離感を失った男が距離感をつかみ直すまでの話だったのかもなあと思いました。
わかりやすくここがおすすめ、という部分がないので、面白さが説明しにくいんですが、序盤を見て雰囲気が好きそうなら見てほしいです。