ブックワームのひとりごと

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口も態度も悪い勇者はひたすら人を助け続ける―七沢またり『勇者、或いは化け物と呼ばれた少女』

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勇者、或いは化け物と呼ばれた少女(上)

 

あらすじ・概要

駆け出し冒険者のマタリが出会ったのは、自らを「勇者」と名乗る少女だった。勇者はその桁違いの力で、魔物や危険人物を排除していく。しかし純真で天然なマタリは、勇者を怖れず自ら彼女についていく。なりゆきで仲間も増え、勇者たちは4人で冒険を続けていく。

 

粗は多いけれど媚びない作品

正直粗は多かったですが、それ以上に読者に媚びない内容で、「これが書きたい」という意思が強い作品でしたね。

勇者のパーティーは4人とも女性で、男キャラも登場するけれど彼女らの関係に挟まることはありません。基本的に4人で助け合い4人で感情も完結していきます。

ある意味百合っぽいのですけど、ちゃらちゃらしていたりきらきらしていたりはしなくて、地に足のついた関係です。女性に夢を見ている感じがなくていい。

激重感情があるわけではないんですが、女同士がわいわいしているのっていいよね、と思える関係性です。

 

勇者の、どれだけひどい目に遭っても人を助けてしまう健気なところもよかったです。口が悪くて性格もよくなくて、でも人助けをやめられない純真さ。ダークなファンタジーですが、彼女の人格が作品に一定の倫理を持たせていました。

 

ただやっぱりツッコミどころも多かったです。世界観がガバガバなのはいいとして、進行がかったるい部分も多く読むのが大変でした。

添えてある挿絵も、明らかに本文と矛盾しているものがあり、そこはもうちょっとディレクションを頑張ってほしかったです。

 

完成度は高いとは言えないですが、作風や人間観がよく、読後感はなかなかよかったです。