あらすじ・概要
クラスメイトに思いを寄せる平凡な高校生、涼一はある日「フラッガーシステム」というものの被験者に選ばれる。それは被験者を中心に世界がフィクションのようにご都合主義になる機械だった。思い人と仲良くなることを夢見る涼一だったが、フラグが立つのはどうにもおかしい女の子たちばかりで……。
風刺と愛が利いたB級小説
めちゃくちゃ笑いました。いい感じのB級小説です。
ツッコミどころだらけなんですが、設定的にツッコミどころだらけだからこそ意味がある、逆転の発想の作品です。フラッガーシステムによるトンチキ展開を見せるにはすべてがガバガバだからこそ面白くなります。
「ありえねー」という展開の連続なんですが、よく考えたら自分たちはそのありえない展開をエンタメの中で受け入れています。「都合のいいフィクションラブコメ」への皮肉が利いています。
そんなワヤな作品でありながら、終盤の展開は熱かったです。ただフラッガーシステムの都合のいい展開に流されるだけだった主人公が、好きな女の子を救うため自らフラグを打ち立てていきます。「自分は確かにこの物語の主人公なのだ」という自覚が、運命を変えていきます。
ただ「都合のいい男性向けラブコメへの風刺」にとどまらず、フィクションだからこそ書ける救いというものを描いたエンディングでした。
面白かったんですけど、ひとつだけ減点要素があって……。それは笑えない下ネタがちょこちょこあったことですね。主人公はばかな高校生なので変なジェンダー観持っててもおかしくはないんですけど、それは作者側からフォローしてほしかったです。ちょっと女性読者としては引きました。