あらすじ・概要
当時婚約者だった王子に「醜い」と言われたことで日がな一日鎧をかぶって生活するようになったモアネット。森の中で魔女として暮らしていた彼女の元に、王子と従者のパーシヴァルがやってくる。王子が不運に見舞われ続けるのはモアネットのせいであり、呪いを解いてほしいと言われるのだが、モアネットに心当たりはなく……。
外見至上主義へのアンチテーゼ的作品
2巻完結なのでまとめて感想を書きます。
あらすじで王子はモラハラ男なのか? と思うかもしれませんが、序盤で「醜い」という発言を深く反省しており、モアネットに謝罪しているのでそこはあまりむかつきません。
むしろモアネットが傷ついたのは「醜い」と言われたあと周囲が憐れんでくれても「醜くないよ」と言ってはくれなかったことで、「それはつらい……」と同情してしまいました。
作中のほとんどでモアネットは鎧をかぶっており、挿絵でもがっつり鎧です。その描写にはライトノベルというコンテンツにおける外見至上主義的展開へのアンチテーゼを感じます。
そんな外見に自信のないモアネットが、根はお人好しゆえに王子とパーシヴァルを助け、外見ではなく精神性や能力で自分自身の居場所を得ていくのは前向きで勇気づけられました。
モアネットの恋愛相手であるパーシヴァルも、最初は鎧に戸惑っていたのがどんどん「鎧でもかまわない」という態度になっていくのがほほえましかったです。鎧を開けたらそこには美少女が……という展開はベタですけれど、美しいモアネットの中身を見ても「すごく好きだったのがもっと好きになった」と1.0から1.1へのアップグレードくらいのノリなのがいい。
世界観にはいろいろツッコミどころがある(何の説明もなく温水シャワーがあったり、有機溶剤という概念があるのかわからないのにマニキュアがあったり)んですが、それを踏まえても面白かったです。おすすめ。