ブックワームのひとりごと

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世界観や設定はよかったけどやや惜しい―廣嶋玲子『鳥籠の家』

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鳥籠の家 (創元推理文庫)

 

あらすじ・概要

仲良く家族と暮らしてきた少女、茜は、両親を借金から救うために、名家天鵺家に引き取られ、若君鷹丸の遊び相手となる。天鵺家は、謎の風習に満ち溢れた家だった。過剰に虫を怖れ、鳥を貴び、跡継ぎを守るために繰り返される儀式。鷹丸と仲良くなった茜は、天鵺家が隠している真実に気づいていく。

 

話や設定は面白いだけに人物描写が薄っぺらいのが惜しい

最後まで読みたいと思うくらいには面白かったんですが、いろいろ惜しいと思う部分も多く、手放しで褒められない作品でした。

 

まず面白いところから。

因習に満ちた旧家にやってきた身分違いの少女! わけのわからない不気味な儀式! 鳥女と呼ばれる人外の少女! と設定や雰囲気はとてもよかったです。こういう話大好き。

少年少女がしきたりや「こうあるべき」という大人からの押し付けに抗い、未来をつかみ取っていくストーリーもよかったです。

文章もわかりやすく、技巧に頼らず平易なので、非常に読みやすかったです。

 

一方つまらないところは、人間描写が雑なところなんですよね……。

主人公ふたりがありがちないい子ちゃんでキャラクターとして面白味がありませんでした。

さらに作品の見どころであろう、静江と千鳥というふたりの重く陰鬱な感情を持つ女性がいるのですが、描写が表面的で説明的なのであまり凄みがありません。ここはちゃんとどろどろ描写を描き込んでほしかったですね。

 

雰囲気や設定は好きだし、こういう作品を作ってくれることはありがたいんですが、他人におすすめするところまでは行かなかったです。雰囲気だけで楽しめるなら読んでみてもいいかも。