あらすじ・概要
働きづめで結婚できなかった女、結婚生活が嫌になって逃げだした女、妻子ある男の愛人として生きた女。幼馴染である彼女らは60歳になり、思い立って同居を始める。自らのこれまでの人生を振り返りながら、新しい出会いや別れを経て老年の日々を過ごす。
生き方を変えることは恥ではない
平成初期の作品とは思えない、現代に通じるものがある作品でした。
まず友達同士のルームシェアものって「いつまでも一緒だよ」という流れになりがちだと思うんですが、この作品では自然な形でルームシェアから出ていくキャラクターがいます。彼女に対して他のふたりもそれなりに葛藤を持ちつつ、部屋を出ていくことを受け入れます。
血のつながらない人間同士の連帯を描きながら、その連帯も絶対ではない。この温度感が絶妙でしたね。
その他にも徐々に妻からの離婚を受け入れていく夫、仕事に夢中でいたかったけれど子どもを持つことを決断した女性など、「変化すること」がこの作品のテーマになっています。
その変化にはどこか物悲しさを伴いますが、「変化によって生き方を変えることは恥ではない」という暖かいメッセージも感じます。価値観なんて変わって当たり前で、それでも今までの人生を否定する必要はないのだと。
60歳になり、永遠などないのだとしみじみ感じる時期になって、人生に迷い、また決断をする三人組の姿には励まされました。
ジェンダー論もテーマの一つであるので、男性にはつらい描写も多いかもしれないけれど、読み進めているうちに説教するだけの話ではないと分かってくると思います。多様な生き方を受け入れる上で、どうしても迷い間違うときはやってきます。男性もそれから逃げられないというだけ。
読み終わってゆっくり噛みしめたくなるような漫画でした。面白かった。