ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

平成

『あの日からのマンガ』しりあがり寿 ビームコミックス 感想

あらすじ・概要 しりあがり寿が見た震災とは……。朝日新聞に掲載された震災発生前後の四コマと、震災にまつわる漫画を収録。放射能や原発事故を比喩で表すなど、「震災後」を意識した作品集。 震災を受けて考え方を変えざるを得なかったあのころを思い出す 『…

『神戸 難民日誌』津村喬 岩波ブックレット 感想

あらすじ・概要 神戸の埋め立て地、ポートアイランドに暮らしていた著者は、阪神大震災を経験する。当時の神戸の雰囲気、人々の姿を文筆家の立場から語る。被災者から見た、震災後の神戸の希望とは。 良くも悪くも当時の文章、とある文筆家の日記 良いところ…

【「東洋一」を目指した図書館の歴史と、「何のために本を集めるか」問題の変遷】長尾宗典『帝国図書館――近代日本の「知」の物語』

あらすじ・概要 「東洋一」を目指して作られた日本の帝国図書館。しかし、その歴史は平坦なものではなかった。図書を買う金銭が不足していた時期、マナーの悪い利用者、そして太平洋戦争中の略奪と検閲。悪い面もある歴史とともに、帝国図書館と日本の図書館…

【京橋のキャバレーで昭和と平成を舞った女】高殿円『グランドシャトー』

あらすじ・概要 義父と結婚させられそうになって逃げだしてきたルーは、京橋のキャバレーグランドシャトーにたどり着く。ルーはそこのホステスとして働くことになった。キャバレーのナンバーワン、真珠はどこか不思議な魅力を持つ女性だった。ルーは寮で真珠…

60歳になった女の幼馴染三人組が同居を始める―近藤ようこ『ルームメイツ』

あらすじ・概要 働きづめで結婚できなかった女、結婚生活が嫌になって逃げだした女、妻子ある男の愛人として生きた女。幼馴染である彼女らは60歳になり、思い立って同居を始める。自らのこれまでの人生を振り返りながら、新しい出会いや別れを経て老年の日々…

南極で調査をするおじさんたちが食べる「命の糧」―『南極料理人』

あらすじ・概要 海上保安庁で働く料理人、西村は、行く予定だった同僚がけがをしたことから南極探査チームに参加することになる。ペンギンもアザラシもいない南極の奥地で、個性豊かな男たちと共同生活を送っていく。しかし閉鎖空間の中、チームの面々は徐々…

ディスレクシアのマジシャン少年がマジックで人々の心を支える―杉本亜未『ファンタジウム』

あらすじ・概要 会社員の北條は、カジノでいかさまをしている少年、長見良と出会う。彼は北條の祖父竜五郎にマジックを学んだという。そして彼は、難読症(ディスレクシア)というハンディキャップを持っていた。彼の才能を生かしたいと思った北條は、マジシ…

嫁姑の戦いをするうちに町を救う戦いへとたどり着く―草野誼『かんかん橋をわたって』

あらすじ・概要 三つの地区に分かれている町で、川南(かーなみ)から川東(かわっと)へ嫁いできた渋沢萌。優しい夫とともに、嫁として毎日頑張っているが、どこかうまくいかない。そんな折、萌は自分の姑が「川東一のおこんじょう(意地悪)」と呼ばれてい…

小学生3人組はおじいさんの死ぬところが見たくて家を覗く―湯本香樹実『夏の庭』

あらすじ・概要 小学六年生の三人は、「人が死ぬところを見たい」という理由で、とある老人の家を覗くことにする。最初は老人は少年たちを疎ましがっていたが、徐々に親しみを覚え始める。少年たちが老人の手伝いをしたり、老人が少年のためにすいかを用意し…

平成不況の中、リストラ代行会社の男が今日も首を切る―垣根涼介『君たちに明日はない』

あらすじ・概要 時は平成不況の時代。リストラを代行している会社に勤める村上真介は、今日もリストラ候補と面接している。そんな中、建材会社のリストラ候補だった年上の女性陽子に興味を持ち、いい仲になる。真介はリストラ代行業務をしながら陽子とデート…

「ひとりで働く」女性の描かれ方から時代の流れを感じる―阿部川キネコ『ミス&ミセス』

あらすじ・概要 独身でイラストレーターをやっている角田美子と、主夫の丸山紀子は親友同士。バリバリ働いている美子と、子育てに忙しい紀子では、生き方も価値観も違う。しかし違う立場だからこそ話せることもあって……。対照的な二人の友情を描いた四コマシ…

製鉄の一族に生きた祖母・母・私の神話的戦後年代記―桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』

あらすじ・概要 山の人たちに置き去りにされ、血のつながらない夫婦に育てられた万葉は、そこの大奥様の要請で赤朽葉家に嫁ぐことになった。千里眼を持つ万葉は、そこでさまざまな未来の幻を見てしまい……千里眼の祖母、漫画家の母、そして物語を持たない私の…

生理用品の歴史から女性解放の歴史がわかる―田中ひかる『生理用品の社会史』

あらすじ・概要 女性に月一回訪れる月経。その不快感を減らしてきたのが生理用品だ。戦前までの女性たちの月経対策や、日本初の生理用ナプキンアンネナプキンの誕生、布ナプキンを巡るイデオロギーと効果まで、日本の生理用品の歴史を追いながらジェンダーに…

子どもは守られるべきものだが戦わなければいけないときもある―小花美穂『こどものおもちゃ』

あらすじ・概要 子役の小学生、紗南の目下の悩みはクラスが学級崩壊を起こしていることだった。その中心にいるのはガキ大将の羽山。紗南は羽山と対決し、荒れた学級を元に戻そうとする。しかし羽山自身も、家庭に問題を抱えていた。羽山は明るく前向きな紗南…

迷走した人間にしか語れない平成がある―雨宮処凛『ロスジェネはこう生きてきた』

あらすじ・概要 作家の雨宮処凛は、学生のころからいじめに遭い、バンギャになっても美大志望の少女になってもどこか名状しがたい生きづらさを感じていた。作者自身の半生を振り返りながら、「ロストジェネレーション=失われた時代に生きた世代」の息苦しさ…

キャットシッターの第一人者が見た猫と人の関わり―南里秀子『猫、ただいま留守番中』

あらすじ・概要 キャットシッターの第一人者である南里秀子。彼女が出会った猫たちも、飼い主たちも、さまざまな事情を抱えている。シッターとして人の家に入り、猫の世話をすることで、人と猫の関係が見えてくる。楽しいことから不満なことまで、猫と働く生…

かっこよくない青春の一瞬のきらめき―豊島ミホ『檸檬のころ』

あらすじ・概要 田舎の進学校、北高。そこで学ぶ生徒たちや周囲の人間は、それぞれに悩みを抱えている。保健室登校の友人を持つ少女、建物の中で交際する寮生に悩む寮を管理する女性、進学で別れ別れになるカップル。みっともなくてみずみずしい、青春を描い…

失恋が連鎖する、数珠繋ぎ連作短編―角田光代『くまちゃん』

あらすじ・概要 アーティスト志望の男に恋した女、恋をきっかけにフリーターから脱出しようとした男、女優をやめて画家の男との結婚を狙う女。今回で振った側が次の回でふられる、「ふる・ふられる」でつながる連作短編。

目の前の問題を解決しない人たちの集まり―江國香織『落下する夕方』

あらすじ・概要 主人公、梨果は恋人の健吾に部屋から出ていかれた。健吾が好きすぎる梨果はそのまま部屋に住み続けていたが、ある日突然健吾の思い人の華子が転がり込んでくる。なし崩しで同居し始めたふたりだったが、華子はするりと梨果の日常に入り込んで…

めちゃくちゃだったゼロ年代の消費者金融事情―宇都宮健児『消費者金融―実態と救済』

今日の更新は、宇都宮健児『消費者金融―実態と救済』です。 あらすじ・概要 長引く不況とともにはこびってきた「サラ金」、今で言う「消費者金融」。いくつものCMが流れるそれの、何が問題なのか。消費者金融によるさまざまな手口を紹介し、多重債務の作り方…

ティーンの少女との共依存関係の行方とは 唐辺葉介『電気サーカス』感想

熱烈におすすめしている人がいて気になった本です。 あらすじ テキストサイト「電気サーカス」を運営している主人公水屋口。ネットの仲間と部屋をシェアし、フリーターとして暮らす。そんな中、水屋口は真赤(仮名)という中学生に出会う。