ブックワームのひとりごと

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倫理のない描写で送る女だらけのソープドラマ―池田理代子『おにいさまへ…』

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おにいさまへ…(1)

 

あらすじ・概要

主人公、奈々子は青蘭学園高等部に入学した。そこにはソロリティという社交グループがあり、美しさや家柄を兼ね備えた子女たちが所属していた。奈々子は家柄も見た目もそこそこなのにソロリティに選ばれてしまう。奈々子は周囲の嫉妬にさらされ、悩む日々を送るが……。

 

良くも悪くもストーリー性やメッセージ性を感じない

昔の作品だということを差し引いても治安が悪すぎる作品でした。女同士のいじめは陰湿だわ、薬物依存のキャラは出るわ、校内で殺傷沙汰は起こるわ。

ここまで治安が悪いとファンタジーだと思えるからいいんですけど、ときどき変に過激な少女漫画が出てくるのは昔からなのだなあ……と思います。

 

ツッコミどころ盛りだくさんで、展開がころころ変わり、何が起こるか予測がつかないので面白くはありますが、そこから得られるものがあるかというと微妙です。

良くも悪くも昼ドラ、ソープドラマのたぐいで、ストーリー性もメッセージ性もあまり感じませんでした。

 

キャラクターが女同士で激重感情を持ち合い、百合めいた展開もするのに、最終的に異性愛に落ち着いてしまうのも時代を感じます。

青春の悩みに別れを告げて大人になっていく姿を描くのは悪くないんですけど、その象徴として同性愛から異性愛への移行を描くのはジェンダー的にもセクシャルマイノリティへの感覚的にもまずいです。

でも昔の同性愛への感覚ってこういうものなんだろうな、と感慨深かったです。

 

倫理もないしすごく面白いというわけではないですが、時代の流れを感じたり、おかしな描写にツッコみながら読んだりする分には楽しかったです。