ブックワームのひとりごと

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宗教2世のエピソードを淡々と漫画で収録―菊池真理子『「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~』

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「神様」のいる家で育ちました 〜宗教2世な私たち〜 (文春e-book)

 

あらすじ・概要

自分の親は宗教を信じていた。それだけで長く排斥感を感じ、生きるのに悩む人々がいる。自らも宗教2世である著者が、2世たちに聞き取り調査を行い、そのエピソードを漫画に起こした。2世たちの宗教との決別、そしてその後の人生とは……。

 

宗教そのものを否定するのではなく宗教の押しつけを否定する

Web連載時に某宗教団体の抗議に屈して掲載取りやめになったいわくつきの漫画。出版社の行動はどうかと思ったので、文芸春秋がこの作品を引き受けたときに、支援もかねてお金を出して買おうと決めました。

 

読んでみると描写に過激なところはなく淡々としていて、いい意味で驚きました。「宗教が憎い」というストレートな苦しみは少なく、「愛してもらったのに親の価値観は受け入れられない」とか「神の存在は信じたいが、多様な価値観を認めない宗教コミュニティが息苦しい」とか、内面の葛藤が強く描かれています。

カルト宗教に悩まされていたとしても、「じゃあやめたら?」と気軽に言われて怒る宗教2世は多いようです。「信じたい」でも「宗教がつらい」の間で揺らいでいるからです。

信仰は捨てなかったけれど宗教コミュニティから離れた人や、信じる親と信じない子とでほどほどの距離感で付き合っている家庭もあり、一概に「宗教は悪」と断じている作品ではありませんでした。

こんな真面目な批判を受け入れられない某宗教団体が心狭すぎると思います。

 

宗教2世の苦しみを知ったところで特別なことができるわけではないですが、著者と出版社に支払ったお金が巡り巡って宗教2世の助けになってくれればと思います。