ブックワームのひとりごと

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実家が寺の著者が、住職の兄をネタに仏僧の世界を語る―杜康潤『坊主DAYS』

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坊主DAYS(1) (ウィングス・コミックス)

 

あらすじ・概要

漫画家、杜康潤の実家は臨済宗の寺。住職である兄に聞き取り調査をしつつ、僧侶になるまでの苦労や、寺での日常を語る。僧侶になるまでの修行の厳しさ、住職として地域を支える多忙さ、現代ならではのお寺の事情など、宗教が身近に感じるかもしれないコミックエッセイ。

 

全く違う世界への面白さとそれでいいのか?というわだかまりと

他の寺にまつわるエッセイを読んだことがありますが、宗派が違えば文化もがっつり違うのだなあと感じさせられます。特に問答の重要性は大変そうです。明確な正解がないわけなので……。

修行のことも寺の運営のことも、実際内部のことを聞いてみる機会がないから新鮮で面白かったです。寺の人間しかわからない僧侶同士の独自の文化や、それを取り巻く人々の行動が興味深かったです。

特に面白かったのが修行にまつわるあれこれで、托鉢のこと、食べ物のこと、日々の生活のこと、そのどれもが俗世とかけ離れていて驚きました。でも宗教をやるってそんなものなのかもしれないですね。

修行僧の行動ひとつひとつに決まりがあって、朝起きる瞬間から、寝るまでルールの中にどっぷり浸かっています。これで何だかんだ納得して僧侶になっているところが、信心のない人間からは不思議です。

 

漫画としてはとても面白い一方で、寺というシステムを維持するために家父長制や男尊女卑に頼っているところがあり、これから大丈夫なんだろうかと心配になりました。

例えば著者の兄が住職になって父親の跡を継ぐことに関してはほぼ拒否権がなかったですし、男だから、長男だから跡を継ぐ前提というのもプレッシャーすごいだろうなと思います。

著者の兄が「子どもの意思を尊重する」と言っているところが救いですが、わだかまりの残る漫画でもありました。