あらすじ・概要
かつてアダルトビデオや風俗のライターをしていた著者は、女性編集者と組んで東京に住む人々の貧困を取材する。風俗で働く女子大生、生活がままならないシングルマザー、障害年金で暮らす障害者など、困窮する女性たちは今何を語るのか。
正論では何も解決しない貧困の問題
著者はアダルトビデオや風俗のライターとして働いていた経歴があり、あなたも搾取する側だったじゃないかというところはあるのですが、そういう著者だからこそ書けるものでもあるのだろうなと思います。
登場する女性たちは、客観的に見れば明らかに間違いだろうという選択をしてしまった人も多いです。しかし著者は、アドバイスも意見もなるべくせずに語り部に徹します。
彼女たちに正論を言うことはたやすいですが、正論で解決しなかったからこそ貧困のさなかにいる。そう思わせてくれる本でした。
登場する女性にはもともと生まれ育った家庭が貧困だった人もいますが、逆に家庭が裕福なのに貧困に陥ってしまった人もいます。親から虐待や暴言を受け、実家にお金があるのはわかっているがどうしても頼りたくない、という場合です。
こういう事例を見ると、家族単位で支援をしようとする日本の福祉制度には限界があると感じます。親から子どもを自立させること、それを手助けすることも大事なのではないでしょうか。
ただひとつ欠点がありました。この本は多くの精神疾患当事者が出てきますが、著者が精神疾患について知識があやふやなまま書いていることです。精神疾患は貧困と密接に関わっていることは確かですが、慎重に語らないと差別を助長してしまう可能性があります。
特に多剤投与で体を壊した人に関しては、きちんと「精神疾患の薬は用法用量さえ守れば怖いものではない」と説明しておかないと精神科を受診しない人が出てきてしまいます。
こういう点では医療のプロの監修を受けてほしかったですね。