あらすじ・概要
アイヌ民族でありクリスチャンでもあった知里雪惠は、アイヌの人々が歌い継いできた神謡をローマ字で表し、さらに日本語訳した。神々や動物たちが語る、アイヌの人々の生活、そして信仰や世界観とは……。
神々や動物が語るアイヌの世界
詩だけを読んでもよくわからなかったんですが、巻末の解説を読むといろいろ納得しました。まず本文を飛ばして解説を先に読んだ方がわかりやすいかもしれません。
アイヌ民族は「動物の神がいる」というより「動物そのものを神だと思っている」世界観の持ち主です。ここで紹介されている神謡も、動物の一人称でこんなことがあった、と語る形式のものが多いです。
しかし、作中で主人公であるはずの動物が死んでしまうことが多々あります。よその文化の人間から見ると皮肉な終わり方に見えます。しかしアイヌの教えによると人間も動物も魂は永遠らしいので、違和感のないオチなのかもしれませんが。
教訓は、「ちゃんと規律を守り、神を信仰しなさいよ」というのは文化が違っても変わらないなあと思いました。日本の昔話も仏教オチ多いですからね。
解説に載っていた、神謡と社会の身分制度の関係は興味深かったです。やはりみんなが公平なわけではないですよね。でも記録に残らなかった神謡が多いことを思うと、わからないこともたくさんあるのだろうなと感じます。
学術的な本ですごく面白いというものでもないですが、アイヌの神謡を知るためにはちょうどいい本だと思います。
↑青空文庫にもあるみたいです。