あらすじ・概要
ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)はごく一部の人の不幸ではなく、社会でありふれた問題である。加害男性に暴力をやめさせるには、何ができるのだろうか。暴力を嗜癖のひとつとして、メンタルヘルスの視点で加害への依存をやめる方法を探る。
別れを受け入れることも支援成功である
結論から言うと加害男性に対して劇的に効果のある支援は未だに存在せず、なかなか難しいです。
著者は加害男性の過去のトラウマや虐待経験に着目し、カウンセリングや他の男性との対話から認知の歪みを取っていくことを目指しています。
新鮮な意見だったのは、「加害男性の支援のゴールが離婚でも成功である」という点です。
加害をやめた結果「もう夫婦ではいられない」と結論に達し、それ以上パートナーを傷つけないでいられるなら、それは支援に成功しているのだと。
確かに別離はつらいですが、「自分は相手を幸せにできないのだ」ということをきちんと受け入れ、建設的に別れを選べるのは救いではあります。
和解することが全てではなく、和解できないことを受容することも、精神的な成長なのでしょう。それもひとつの相手への愛情かもしれません。
本の中では、加害男性の支援と、フェミニズムの関係についても触れられています。
女性への暴力防止に携わる人の中には、少しでも加害男性の支援をすることに怒りや否定をあらわにする人もいます。
もちろん加害男性は批判され、社会的な罰を負う必要はありますが、加害男性をそのままにしておけば新しい女性の被害者が生まれます。加害男性の加害をやめさせるのは、女性のためでもあります。
加害男性の支援はフェミニズムに反する、というのは誤解ですが、著者は批判から逃げずに、理解を求めていく重要性を説きます
実際にDV被害に遭っている人にとっては、何を言っているんだという内容かもしれませんが、だからこそ精神的に余裕のある人間が考えなければならないことだと思います。