あらすじ・概要
人間に擬態しているが、ダルダル星人のダルちゃん。ある日、同僚に絡まれたときに仕事仲間に助けられ、それから自分のことを考え始める。彼氏ができ、初めて気兼ねなく話せる相手を得る。詩を書き始めたダルちゃんは、恋人のことを詩に書くが……。
表現することには業がある
生きづらい女性が創作をやって救われる話かと思ったら、もう一段展開が用意されて驚きました。業は深いですが、読んでよかったです。
ダルちゃんの正体である「ダルダル星人」は実際にこういう形であるわけではなく、「社会の『普通』に馴染めない」ことへの暗喩でしょう。そして擬態とは、普通がわからないなりに普通に振る舞おうとしているということだと思います。
詩を作ることを知ったダルちゃんは、そこであるがままの気持ちを書いたことで心の救いを得ます
。それに待ったをかけたのがダルちゃんの恋人、ヒロセくんでした。
ヒロセくんもまたコンプレックスを抱えた男性で、ダルちゃんの詩に自分自身を出してほしくないと頼みます。
この、詩というのが、ヒロセくんのコンプレックスに振れてしまっている内容で、そりゃ嫌な気持ちになるだろうなあ、と思いました。
しかし、ダルちゃんはヒロセくんを守るために作風を変えることもできませんでした。
最後の別れには、悲しいというよりもこれで正しかったのだと感じました。お互い、譲ることができませんでした。ヒロセくんは、なるだけダルちゃんのことを考えてくれたなあと思います。
苦く、切ない結末でしたが、それでも一抹の救いのある終わり方でした。