ブックワームのひとりごと

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【少女漫画大好きなスポーツ少女が、漫画家を料理でサポート】仲村つばき『漫画家先生とメシスタント』感想

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漫画家先生とメシスタント (富士見L文庫)

 

あらすじ・概要

運動能力が高くボーイッシュな見た目でありながら、少女漫画が好きであることに引け目を感じている少女、ときわ。彼女は父が経営しているアパートに憧れの少女漫画に大好きな少女漫画の作画と原作者が暮らしていることを知る。得意の料理を生かし、彼らをサポートするときわは……。

 

家事労働をする人間を尊重してくれる作品

女子高生が年上のお兄さんに惹かれるけれど、お兄さんは全くその気がないので進展しないほのかなラブストーリーです。こういうの大好きです。

年上の異性に憧れる未成年キャラは好きだけど、現代の世界観で年上キャラがほいほいその好意を受け入れると倫理が気になってしまいます。

こういう脈がなさそうな年の差のほうが安心して見られますね。

 

作品としては漫画がテーマです。反りが合わない編集者ともめたり、二次創作でバズを狙おうとする漫画家が出てきたり、生々しい題材も多いです。

それでいて、安易に勧善懲悪なオチにならないところは好感が持てました。

編集者ともめた漫画家は、したたかな駆け引きをして自分が有利になる条件を引き出します。また、ニ次創作でバズろうとしていた漫画家は、自分の属性に下駄をはかせてもらっている不安を吐露します。

その描写がとても人間味があります。善人ではないかもしれないけれど親しみの持てるキャラクターでした。

 

さらに、ときわは学生でありながら家事を任されているヤングケアラーではあります。しかし「父親ときちんと家事を分担している」「周囲の大人がときわに無理をさせないよう気を付けている」ので、嫌な感じは少ないです。

さらに、家事労働が人を支えるものとして尊重されているのが大きいです。

他人をケアすると言っても、周囲の人たちが自分のことを気にかけてくれるだけで違うものだなと思いました。