ブックワームのひとりごと

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【冴えない江戸時代武士の賭博・浮気・暴力】横山光輝・神坂次郎『元禄御畳奉行の日記』感想

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元禄御畳奉行の日記 上 (秋田文庫 7-44)

 

あらすじ・概要

尾張藩士の朝日文左衛門は、武士として重大な仕事があるわけでもなく、賭博、女遊び、深酒などをして暮らしていた。浮気のせいで妻に嫉妬されて家に帰りたくなくなったり、日々のゴシップニュースを書き留めたり。時代劇では描かれない、「かっこよくない武士」の姿を描く。

 

創作では扱われないテーマだけに面白い

賭博! 浮気! 暴力! という感じで倫理がなさ過ぎて笑えてきてしまいました。今の感覚ではこんな日記は書けないので、江戸時代の人間ならではだということがわかります。

江戸時代は戦争がなく、おかげで文化や趣味が栄えた時代でしたが、実際にその場を生きた人の話を読むと人権の概念は全くないのだとしみじみ思います。なまじ、現代人に似たボンクラさがあるだけに、ギャップが大きいです。

 

女も男も浮気しまくるし、女性の浮気を男性側がなかなか止められないエピソードが多いので、「貞淑な女」の理想は建前だったんだなあと感じます。

もちろんこの日記を書いているのが男性なので、男性に都合のいいことを書いていると思いますが、それを踏まえても性倫理がガバガバです。

さらに、心中が冗談ではなくトレンドだったので、心中騒ぎがあると野次馬に行き、ドラマのような恋愛を求めて、違ったら落胆する文左衛門が倫理なさすぎでしたね。

「曽根崎心中」で心中が流行ったというのも全く嘘ではなかったんですね……。

 

歴史創作においては、ある程度現代人に共感されるキャラクターでないとエンタメ化しづらいです。だからこの日記で描かれた武士の日常が創作に取り入れられることはないでしょう。

しかし、だからこそ価値のあるコミカライズでした。なかなかこんな描写を入れる作品ないですからね。江戸時代の人間とのジェネレーションギャップを感じたい人にはおすすめです。