あらすじ・概要
ダンジョンで妹、ファリンを失ったライオスは、残ったパーティメンバーでファリンを回収し蘇生しようと試みる。しかし食料はなく、ダンジョンで自給自足することを迫られた。魔物オタクのライオスはダンジョンに住まう、魔物を調理、実食しながらダンジョンの深部へ向かう。
食べることは生きること、それは絶望ではない
いい最終回だった! 完! で済ませたいところですが、詳しく感想を書いていきます。
最初はファンタジーあるある+グルメのコメディでしたが、ストーリーが進むにつれ世界観に深みが増していき、世界のなりたちに迫るというハイファンタジーになっていきます。
部隊はエルフやドワーフがいる『指輪物語』風の多種多様な種族のいる世界。主人公のライオスも人間族ではなく「トールマン」とい呼ばれる種族です。
エルフは排他的でお高く止まっており、ドワーフは手先が器用で、オークは野蛮……というお約束を踏襲していますが、よく読むと描写がテンプレ的ではなく、種族ごとに多様な文化があることがわかります。
そして、魔物オタクのライオス、禁じられた古代魔法を使うマルシル、どんな魔物も料理してしまうセンシは、この世界の「普通」ではいられない存在だということもわかってきます。
普通ではないから道を誤り、普通でないから状況を打破する。そのバランスが面白かったです。
唯一パーティの「常識人」なのはチルチャックですが、彼の価値観もまたたくさんある文化のひとつでしかありません。
この作品のラスボスである翼獅子の正体が判明する終盤は、ファンタジーセカイ系の様相を呈してきます。
万能である翼獅子を倒す方法というのが、めちゃくちゃでありながら「でも作品のテーマとしてこれしかない」というもので、感動しました。
一度「モンスター」になったライオスが、人間として戻ってきてくれてほっとしました。
大団円でありながら、ところどころにほろ苦さもある、美しい終わり方でした。
全ての人の願いを叶えることはできない。でもみんな生きて、ものを食べている。そのことに救いを感じる物語でした。