あらすじ・概要
女装の東大教授、安冨歩とその相棒である「ふーちゃん」。彼等には抑圧的な親に悩まされ、生きづらさを抱えていたという共通点があった。過去の恋愛や結婚についての違和感を乗り越えて、自分らしい生き方を獲得していくふたりを描いた作品。
こうあるべきという規範からの脱却
社会の「こうあるべき」という規範に悩まされ、少しずつ成長していく二人の姿が印象的でした。面白かったです。
ちょっと抑圧的な男性が突然女性の格好をするようになった……トランスジェンダーという言葉はちらっと出てくるだけで、どのくらい性自認が女性になったのかはよくわかりません。
ただ言えるのは、本人たちが居心地がいいと思えるのが結婚でも恋愛でもなくこの関係だったということです。恋愛ありきの関係ではないコンビで幸せにやっていくという描写は、救いではあります。
それだけに、「このふたりにロマンスがあるんじゃないか?」というオチは余計でした。ロマンスがやりたかったらやればいいし、違うなと思ったらやらなければいいし、それは著者が決めることではありません。
過去の恋人や結婚相手についても、パートナーとして生きていくことはできなかったけれど恨んではいなさそうなのも面白かったです。
うまくいかなかったけれどそれは夫婦としてであり、友人として、知人としては恨んではいない、というドライさが魅力的でした。
このくらい、気楽に恋愛や性愛をとらえられたら楽だろうなと思います。