あらすじ・概要
仙台に拠点を置くローカル新聞河北新報。2011年3月11日、会社を東日本大震災が襲う。自らも被災しながら、記者たちは被災者に情報を届けるために東北に散った。地震発生直後から、避難所での生活まで、記者たちの働きを描いたルポルタージュ。
自らも被災しながら避難所に情報を届ける記者たち
とても重苦しい題材で、胸が痛むとともに、希望も感じる本でした。
東日本大震災では電気や通信網というインフラを失い、紙の新聞は被災者に需要がありました。避難所で被災者たちは新聞を奪うように読み、家族や友人の情報がないか探していました。
災害の規模が大きいため、ショッキングなニュースも多く、記者たちがどこまで新聞に載せるか悩む展開も興味深かったです。
犠牲者数の多さが被災者の希望を折ってしまうのではないか、悲惨な写真でさらにトラウマを植え付けられてしまうのではないか、記者たちの苦悩が痛々しかったです。
さらに、飢え、寒さ、避難所での自死や、衛生環境の悪化など、その場にいなければ感じられない肌感覚がありました。
記者たちもまた被災者のひとりであり、仕事をするうちに精神的に追い詰められていきます。最後に新聞社が記者たちに取ったアンケートが載っています。生々しく悲惨な内容でした。
そして、記者たちがどうにか「被災地には情報が必要だ」という思いで踏ん張っていたことがわかります。
最近は「マスゴミ」という言葉が流行していますが、やはり情報インフラは人間の社会には必要なのだと感じます。すべてを否定する・すべてを肯定するのではなく、よいジャーナリズムがあったら読者の方がしっかり評価するのが大切だと思います。