ブックワームのひとりごと

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『国境なき医師が行く』久留宮隆 岩波ジュニア新書 感想

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国境なき医師が行く (岩波ジュニア新書 635)

 

あらすじ・概要

国境なき医師団に参加することを決めた日本人医師は、内戦続きで疲弊したリベリアへ派遣された。派遣先での人間関係や、多忙な日々に悩みながらも、リベリアの人たちを手術する。国境なき医師団は現地でいったいどういうことをしているのかわかる本。

 

キラキラしていない人間味のある話で面白い

国境なき医師団のキラキラしたところを紹介して国境なき医師団に寄付をしてくださいということかと思ったら、全然違いました。慈善事業に参加するにおける人間関係の面倒くささ、また国境なき医師の多忙っぷりが描かれています。

 

内戦後の混乱が続くリベリアに医師として到着した著者は、手術で多忙な日々を送ります。日曜日にも手術をしなければならない生活です。

また、到着時に英語が苦手で頼りきりことから、通訳を担当してくれた同僚と険悪になったり、価値観の違う同僚と微妙な雰囲気になったりします。

慈善事業のかっこよさはない話です。結局知らない人と仕事をする上での悩みはどこに行っても変わらないのだと思えます。人間味のある題材で面白かったです。

 

この本の感想を書くためにWikipediaのリベリアの歴史をざっと読みました。支配者と被支配者の闘争と、部族間の戦いが交わり合い、敵対していた人たちが共通の目的のために手をとります。リベリアは長い戦争で疲弊し、国民の間での犯罪も増えています。

著者もほとんど治安の悪いエリアに行くことはなく、移動も護衛つきでした。そのため現地のリベリア人と深く交流することはできませんでした。

助けに来ているのに、助ける人たちがどういう暮らしをしているのかわからない。しかしそれが医師たちを犯罪から守るための行為なのです。

著者も安全なところで医療だけをやっていることに罪悪感があったようです。その気持ちはわかる気がします。

 

 

 

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