ブックワームのひとりごと

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現実世界の住人はおとぎ話の住人に勝てない 『シンデレラ』感想

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シンデレラ (字幕版)

金曜ロードショーでシンデレラを見ました。

いやもうすごかった……映画館で見ればよかったな。

 

あらすじ

親の再婚により継母と一緒に暮らすことになったエラ。しかし父親は死に、シンデレラ(灰かぶり)とあだ名をつけられ継母にいじめられるようになった。ある日シンデレラは見知らぬ男性に助けられ、彼との再会を望む。

 

継母かわいそう

トーリーは、現代風に脚色されてはいるものの、 ほとんどそのまま。

しかしこの作品で白眉なのはシンデレラの継母の描き方。美しく利発な彼女は、夫を亡くし、金銭的に頼るためにシンデレラの父と再婚します。

彼女がシンデレラをいじめるまでの過程のどうしようもなさがつらいです。女性が一人で生きていけない時代に生まれ、馬鹿な娘を二人抱えて、望んでいない結婚をしなければならなかった彼女の心の内を察すると……。

主人公はシンデレラなのに、継母にすごく同情してしまいます。もちろん継母のやったことは許されるものではありません。しかし要所要所で「こうすればここまでひどくならなかったのでは」という部分があるのでそれがなんともつらいです。

運命をやり直すことはできない、もう若くない彼女がどうにも哀れでした。

 

シンデレラは悪意を理解できない

一方のシンデレラは明るくタフで優しく、継母にいじめられても希望を失わない女の子。

そして彼女の最大の特徴は、継母の悪意を理解できないということです。継母がどうして自分をいじめるのか最後までわからないまま終わりました。

「シンデレラみたいな女の子はいないだろう」という感想を見かけたけど、私はいると思います。本当に育ちのいい人って他人の悪意を理解できない。彼らにとっては犬に嚙まれるのも人にねたまれるのも大した違いがないんです。

生まれてすぐに無償の愛に包まれたシンデレラに、憐れまれての愛で再婚しなければ現実を乗り越えられなかった継母が勝てるはずがありません。だってそもそも同じ世界に住んでいないのですから。

ハッピーエンドの内容はそのままに、二人の断絶を描いたところがすごかったです。本当にディズニーかな!?

 

現代のおとぎ話の課題

シンデレラを見て思ったのが、「素敵な王子様と結婚して幸せになる」というエンディングをディズニー自身も古臭いものだと考えているんだなあということです。

シンデレラはおとぎ話の住人だから王子様と幸せになれる。だけど継母の前に広がっているのは過酷な現実です。彼女はそれを乗り越えなくてはならなかった。

それと同じように視聴者が立ち向かわなきゃいけないものも現実で、おとぎ話ではないんですよね……。

十二国記の『華胥』の話を思い出しました。王に理想の国を見せてくれる枝の話なんですが、ある役人が「王の理想に自分の居場所はなかった」と言います。自分は不完全だから、理想の国には自分の居場所がない、と。

シンデレラの幸せに居場所がない継母は、去っていくことしかできない。それをディズニーが描いちゃうことがすごいです。おとぎ話って残酷であることを示しちゃう。

それを思うとぐるぐる考えてしまっていまだにショックが抜けません。

 

まとめ

ハッピーエンドのはずなのに、悲しい気持ちでいっぱいになった作品は初めてです。

長々と継母のことばかり書いてしまったけど、シンデレラもめちゃんこかわいいのでぜひ見てください。面白いですよ!