ブックワームのひとりごと

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短くてもこんなにどきどきする! 250ページ以下の薄くて面白いおすすめ小説17選

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同人、商業の壁はなく、「分厚い本が好き」という人はよく見かけます。しかし、逆に「薄い本が好き」と主張する人はあまり見かけない気がします。

個人的に、「分厚い=作品への愛」みたいな発想は好きではありません。ページ数なんてただの数字なので、そんなもので愛をはかるのはおかしいと思います。

薄い本には薄い本なりの良さがあります。それは内容のインパクトだったり、テンポの良い展開だったり。今回はおすすめを紹介しながら薄い本への愛を語ろうと思います。

 

 

 

『悲しみよこんにちは』フランソワーズ・サガン 新潮文庫 197ページ

父親の再婚を阻止しようとする少女。しかしその結末は悲劇的なもので……。

青少年のキリキリするような精神状態がよく描かれています。父親が他人のものになってほしくないという独占欲、子ども独特の残酷さが見ていてハラハラしました。

なんともやるせないエンディングが思い出すたびにつらいです。

悲しみよこんにちは (新潮文庫)

悲しみよこんにちは (新潮文庫)

 

 

『僕たちは歩かない』古川日出夫 角川文庫 112ページ

クリスマスの夜、「僕たち」は地上に足を付けない冒険に出る。

日常の隣のもう一つの世界を描き出す不思議な一冊です。ファンタジーではありますが、ひょっとしたらこんな世界があるかもしれないと思えてきます。

クリスマスものなので、クリスマスに読むのもおすすめです。

僕たちは歩かない (角川文庫)

僕たちは歩かない (角川文庫)

 

 

『水妖記―ウンディーネ』フーケー 岩波文庫 165ページ

人間を愛し魂を得た水妖、ウンディーネ。しかし愛した人間は彼女を裏切った。

人と人でないものの美しい悲劇。異種婚姻譚が好きな人にはおすすめです。

たとえ何があっても人外のさだめに従わなければならないウンディーネがけなげでかわいそうです。

水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)

水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)

 

 

 『春琴抄』谷崎潤一郎 新潮文庫 106ページ

盲目の琴の師匠春琴と、その弟子佐助の歪んだ愛を描く奇妙な恋愛小説。

短いながらも、ふたりの狂気が恐ろしくなる話です。春琴と佐助の主従関係が逆転するさまはまさにSはサービスのS。

おどろおどろしいような、それでいて美しいような、複雑な感想を持ちました。

春琴抄 (新潮文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

 

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『クワイエットルームにようこそ』松尾スズキ 文春文庫 148ページ

隔離病棟のクワイエットルームで目覚めた主人公は、精神病院からの脱出を目指す。

正気とは何か、「普通」とは何か考えさせられる話です。自分自身の心を知り、自分のおかしさを抱えて生きていく主人公を応援したくなりました。

すっとぼけたようなギャグセンスも見どころです。

クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

 

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『薬指の標本』小川洋子 新潮文庫 185ページ

標本技師のもとで働く女性の話『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の二本立て。

思い出のものを標本にするという不思議な標本技師の世界がとても耽美です。エンディングには恐ろしさを覚えます。

美しいけれど、生々しく怖くもある世界観が見どころです。

薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本 (新潮文庫)

 

 

 『ハゴロモ』よしもとばなな 新潮文庫 185ページ

不実な恋に疲れた主人公は故郷に帰ってくる。そこでの人との出会いが彼女を癒していく。

主人公と一緒にセラピーされているような感覚になる癒し系の小説です。こんな出会いがあったらいいなと思えます。

人生にはこういう安らげる時間が必要ですね。

ハゴロモ (新潮文庫)

ハゴロモ (新潮文庫)

 

 

『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』桜庭一樹 201ページ

自衛隊を目指す女の子の前に現れた、人魚を名乗る少女。彼女はひどい境遇にいるようで……。

 最初から悲劇だとわかっているタイプの小説です。どうにもならない現実へ突き進む少女たちの悲哀が読んでいてつらいです。

少年少女の無力さに打ちひしがれる一冊。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

 

 

 『きらきらひかる』江國香織 新潮文庫 213ページ

ゲイの夫とアル中で情緒不安定な妻。彼らなりに愛し合っていたが、周りはそれを許さず……。

ギャグなのかシリアスなのかわからないおかしな夫婦関係が見どころ。同時に、現在の結婚制度では救えない人々について考えさせられます。

世間の常識から外れていても一緒にいたいと思う二人は美しいです。

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

 

 

 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』森絵都 角川文庫 209ページ

ピアノをテーマにした短編集。

相手のことが好きでも、うまくやっていけるとは限りません。主人公にとって都合がいいだけのキャラクターがいないところがリアリティがあって面白いです。

登場するピアノ曲がうまく内容とかみ合っているので、読むと聞いてみたくなります。

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

 

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 『きみにしか聞こえない』乙一 角川スニーカー文庫 201ページ

脳内の携帯電話が見知らぬ少年につながる「Calling You」などを収録した短編集。

登場人物はさびしさや孤独を抱えていることが多いです。それでも前に進もうとする姿は、勇気を貰えます。

せつなくて悲しいけれど、読み終わると少しさわやかな気持ちになる短編集です。

きみにしか聞こえない ?CALLING YOU? (角川スニーカー文庫)

きみにしか聞こえない ?CALLING YOU? (角川スニーカー文庫)

 

 

『玩具修理者』小林泰三 角川ホラー文庫 221ページ

女性と会話する男。女性は、玩具修理者に弟を直してもらったときの話をする……。短編を二つ収録。

表題作「玩具修理者」は、グログロしいので人は選びますが、短編ホラーらしいひねりのきいたオチが最高です。最後のシーンを何度も読み返しました。

「酔歩する男」は時間SFが好きな人におすすめ。

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

 

 

『夏の庭』湯本香樹実 新潮文庫 218ページ

「人が死ぬところを見てみたい」と老人に近づく少年たちだったが、いつの間にか老人と仲良くなってしまい……。

少年と老人の交流がほほえましく、こんな大人に出会えたら楽しかっただろうなと思います。

老いた人の抱える物語が、垣間見えるのもせつないです。

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

 

 

『ポプラの秋』湯本香樹実 新潮文庫 218ページ

自分の棺桶に死者への手紙を入れ、届けるつもりだというおばあさん。少女は亡くなった父への手紙を彼女に預ける。

親しい人の死を受容しようとする親子。その受け入れ方は親子でも違っています。

失ったことの悲しみを抱えながらも、なんとか生きていこうとする人々の姿が胸を打ちました。

ポプラの秋 (新潮文庫)

ポプラの秋 (新潮文庫)

 

『夏と花火と私の死体』乙一 集英社文庫 223ページ

 殺された死体である「私」は兄妹の証拠隠滅のために隠される。短編二作を収録。

表題作は主人公が死体というおどろおどろしいサスペンスホラー。いつばれるかひやひやしながら読みました。

話は過激ながらも、淡々と展開するところがまたギャップを感じて怖いです。

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

 

 

 

『パノラマ島奇譚 江戸川乱歩ベストセレクション』江戸川乱歩 角川ホラー文庫 219ページ

 売れない物書きが財力を得て、奇妙な島を作り上げる。短編二作を収録。

突然金持ちになってやるのが、島を丸ごと芸術作品のような世界にするという部分が面白いです。タイプは違うけれど、瀬戸内芸術祭に行ったときのことを思い出します。

えぐみのある「芸術」の描写が見たい人にはおすすめです。

パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション (6) (角川ホラー文庫)

パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション (6) (角川ホラー文庫)

 

 

『青春デンデケデケデケ』芦原すなお 河出文庫 225ページ

 四国の田舎の男子高校生たちがバンドをやる青春小説。

男子高校生の熱くて、しかしどこかとぼけた青春が楽しいです。かっこよさにあこがれたけれど、実際のところそこまでかっこよくない10代の世界が読めます。

こんな青春があったらいいなと思える小説でした。

青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)

青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)

 

 

 まとめ

というわけで、私が好きな薄い文庫本の世界でした。

ページ数的にはさくっと読めるものばかりなので、肩の力を抜いて読んでほしいです。内容はハードなものもありますが……。

短い小説の面白さを知ってもらえると幸いです。

 

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