青春小説のおすすめとして紹介されていた本です。
あらすじ
とりたてて得意なことのないアザミの、唯一の楽しみは音楽。受験前、自分が何がしたいのかわからないまま、友人のチユキとぐだぐだした日常を送る。しかしついに、進路を決めなければならなくなり……。
読みにくさが逆にリアリティを感じる
この作品の文章は一文が長く、だらだらしていて正直読みづらいです。
しかし、その文体が主人公アザミのぐだぐだで格好つかない日常をリアルに表していて、逆にマッチしています。
考えはいつもまとまらず、結論を捕まえたと思ったらすぐに逃げていく。だけど音楽を聴いているときだけは生きている心地がする。そんなアザミの思考を生々しく感じるには、この文体しかなかったのだろうと思います。
この作品は絶対にこの文体でしか書けません。普段はくせのある文章は好きではないのですが、読みにくさに批判やいらだちを感じるより、文章とテーマの一致への感心が先にきました。
実際に読んでみないとわからない感覚だと思うので、興味がある人には読んでみてほしいです。
オチらしいオチはなくただ音楽だけがある
アザミのぐだぐだな日常は、明確なオチのないまま終わってしまいます。拍子抜けするくらいあっけないです。
しかし最後まで音楽はアザミの中に流れ続けていました。そこで思い出すのは、『ミュージック・ブレス・ユー!!』という「音楽はあなたを祝福している」というタイトル。この世の誰に祝福されなかったとしても、音楽だけはアザミを祝福しています。この小説はそのことがわかるだけの話だったのかもしれません。
面白い、というタイプの小説ではありませんでしたが、心にひっかかって取れないような作品でした。
ただかなり好みは分かれる話です。青春のキラキラを期待して読むと、裏切られる作品でした。
まとめ
面白かった、という感じではありませんでしたが、こういう作品もありだなと思えました。
アザミはこれからも音楽を聴きながらしぶとく生きていってほしいです。
- 作者: 津村 記久子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/23
- メディア: 文庫
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