あらすじ
遠鳴堂に、鳴弦師の見習い甲斐がやってくる。彼は幽霊に取りつかれていた。それは双子の片割れの霊で、弟に「自分は自殺であること」を伝えたいという。明は甲斐を手伝うことになる。
淡々としつつ闇が深い
今回はかなり、闇の深い内容でした。母親と子の確執、双子の兄弟の微妙な力関係。どうあがいてもすっきり終わりようがないテーマでした。
しかし、いわゆる「毒親」にカテゴライズされる親でも、一方的に断罪することがなかったのが、この作品の優しさだなあと思います。
もちろん許せないことは許せないし、彼女がやったことが戻ることはないけれど、それでも何をしてもいい、死んでも構わないと思うのは違う。そう明をはじめとする登場人物が考えてくれたのはよかったです。
ハッピーエンドにはなりようがないけれど、理不尽な現実に抗い生きていくことは無駄ではない。そう思えました。
意外と恋愛要素が多い内容
読んでいて気づきましたが、この本案外恋愛要素が多いですね。書き方がほのめかす程度なので、あまり意識しないけれど、気づくとちょっとほほえましくなります。
望月の、明へのささやかな思いは届く日が来るんでしょうか。でもまだまだもだもだしているでしょうね。
甲斐と安達の関係が、友人になるのか恋愛感情になるのかも気になります。どっちに転ぶにしろ、仲良くしていてほしいです。
恋愛感情がほんのり示されつつも、あくまでストーリーの補助的な要素であって、メインではないので逆に読みやすいです。
しかし、前巻に引き続き、この本のテーマは「あやかし」ではなくて「幽霊」だなと思います。タイトル詐欺はあんまり好きではないのでそこはちょっとマイナスかもしれません。(タイトル詐欺にストーリー上のなんらかの意図がある場合は別として)
まとめ
闇が深い話でしたが、それでも少し希望があって面白かったです。
しかしどうやら次で打ち切りっぽいですね。もっと読みたかったなあ。